淡彩で描く風景 メルボルンの大聖堂

メルボルン  セント・パトリック大聖堂

 私が社会人になって始めての長期休暇でオーストラリアのシドニーを訪れた経緯はすでに書いた通り。(詳細はこちら→)
 今回はその時訪ねたもうひとつの都市メルボルンを紹介しよう。シドニーは歴史も古く、とても味わいある町だが、歴史的な建築資産はあまり残っていない。とても現代的な町だ。
 それに対してメルボルンは19世紀のイギリス王朝風デザインの建物が今なお多く、その数はロンドンに次いで2位だという。

 私が訪れたのはもう30年ほど前。今は随分変わってしまったかもしれない。だが、インターネットで調べる限り、相変わらず人気のある建物がこの、「セント・パトリック大聖堂」だ。
 メルボルンに入植が開始されたのが1835年(歴史的にはシドニーより後になる)。「メルボルン」という、時のイギリス首相の名に因んでこの町の名前が決まったのが1837年。
 そしてこの大聖堂が計画されたのが1848年。入植が始まるとまもなく計画されたことになる。完成にはさらに80年以上かかったというから、まさに入植者の心の支えとなり続けてきた建物だったのだろう。

 冒頭の淡彩スケッチが、その大聖堂だが、当時の私はいまのように水彩画にこだわりがなかった。だからせっかく持っていったスケッチブックも水彩紙ではなく、普通の画用紙だ。絵具も私が愛用しているウィンザーニュートンではない。当然、発色も今ひとつで、決して絵の出来に満足してはいない。だが実は旅先での淡彩スケッチとしてはとても思い入れがある。

 何故ならプロフィールで書いたように(詳細はこちら→)私の大学の専攻は「建築歴史」だった。
 だから「ゴシック建築」は当然知っているが、あくまで文献で得た知識だけ。実際にこの眼で本当のゴシック様式の建物を見たのはこの時が初めてだったからだ。
 尖塔の高さは103メートル。ケルン大聖堂(ブログの記事はこちら→)の150メートルには遠く及ばないが、初めて見る日本人を驚かすには十分だ。

 躊躇せず、スケッチブックを開いて、絵に没頭したことを覚えている。最近の私は、水彩画の作品制作のために旅をするので、ペン描きの絵を出来るだけ多く描き、色付けは帰国し、イメージ作りをしてから、じっくりと塗ることが多いが、この時はその場で完成させたくて、色塗りまで終えてしまった。
 ふと気がつくと3時間以上経っていた。実はその間、家族はほったらかしだった。大いに非難されたのはいうまでもない。

 外壁は石造り。正面に双塔。平面はラテン十字。屋根の鉛直荷重は交差リブヴォールトとピア柱で支え、ヴォールト屋根の水平力はフライングバットレスで支える。構造的な壁はもはや無く、柱の間は大きな薔薇窓とステンドグラスが嵌められる。
 高貴な光に満たされる巨大な内部はまさに神への祈りの空間となる。知識を記述すればこんな文章になる。だが、その知識を自分自身の体験で証明した時、初めて知識は感動に変わるのだと思う。

スケッチは私にとって旅の感動の証明でもあるのだ。

P.S.
ゴシック様式とロマネスク様式の解説、その違いについての記事をこのブログで書いている。興味のある方は是非参照してほしい(詳細はこちら→)。

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