ライン川の古城を2日でスケッチする方法とは?

ラインシュタイン城  グリム童話に現れる魔法の城のよドイツでう

ドイツで水彩画を描くなら「城」!

 何故なら城はある意味、その国の歴史の決定的瞬間を知っているからだ。中でもドイツ、ライン川沿の古城の魅力は格別だ。ただここを効率的にスケッチするのにはちょっとした事前知識がいる。今回はそのノウハウをお伝えする。

 インターネットで調べてみると、ライン河沿いの古城はいくつもの小さな町、村に分かれている。普通の観光コースはいわゆるライン下りの船から外観を駆け足で見るというもの。そして時間とお金に余裕のある人は古城ホテルに泊まり、古城レストランで食事をするというコースだ。

しかしスケッチを目的とする者にはこのプランはおすすめできない

マインツの駅舎

 何故なら、刻々と、定められたコースで動く船からは古城の記念撮影は出来ても、自分の好みのアングルをじっくりとスケッチする時間は取れないからだ。
 しかも古城ホテルはフランクフルト空港から遠いので、日本を朝出発して、その日のうちにホテルにチェックインするのが難しい。

 そこで、私が考えた3泊(夜着、早朝出発なので、実質中2日)のスケッチコースを教えよう。最も効率的にスケッチができるプランだと思っている。

 まずフランクフルト空港からマインツへ入る。この都市は列車で空港から30分ほどで着ける。私は駅前のホテルを予約したので、初日の夜はその町でゆっくり食事を取ることができた。

 マインツはライン川沿いの主要駅を走る列車の起点となる駅だ。ここから各古城まで2日間、列車に乗って移動すれば効率よくスケッチができるのだ。

到着の翌朝マインツからトレヒティングスハウゼンに向かおう

ライヒェンシュタイン城

 ここにはライヒェンシュタイン城とラインシュタイン城がある。いずれも駅から歩いていける距離にある。前者は麓から見る山上の姿がとても美しい。城の中もよく保存されていて、城内にも絵になりそうな、いい構図は多くある。特に城塔とライン川が重なる構図がいい。

 後者はさらに30分駅から歩く。山道の中腹に梢の切れる場面が現れる。グリム童話に出てくる魔法の城のモデルのようだ(冒頭の写真)。観光客に解放されている内部は狭いが、レストランから見るライン川は素敵だ。

翌朝はまず食事前にマインツの町をスケッチする

マインツ大聖堂

 マインツ大聖堂はなかなかいい。しかし残念ながら、周辺の景観がいまひとつ。聖堂の横に近代的なデザインの銀行が並んでいたりする。建物だけを描くならばいざ知らず、町並みを描こうとすると、構図がむつかしそうだ。

キルシュガルテン の町並み

 聖堂の近くに「キルシュガルテン」という中世の町並みが残る街区がある。
こちらは素晴らしい。町並みが完璧に保存されている。マルクト広場と併せて是非スケッチしたいところだ。

シュターレック城

 次の古城はマインツからバッハラッハまで列車にのる。駅から歩いて20分くらいで「シュターレック城」だ。ここはホテルとして営業している。

バッハラッハの町並み。背後に シュターレック城

 そしてこのバッハラッハは町並みも非常に美しい。急勾配の三角屋根が連続するドイツらしい町並みだ。

 実はここから先、ケルンまでのルート選択が難しい。ライン川沿いの古城は地図で見ると12棟ほど。しかしその一つ一つは結構離れており、駅から歩くのは困難な距離にある城もある。

 従って列車の時間、スケッチの時間を調整しつつそれら全てを訪ねて歩くのは、制限ある旅程のなかでは現実的ではない。それにせっかくここまで来たからには、ライン下りとクルーズ船内のモーゼルワインを楽しむことも必要だろう。

バッハラッハからケルンまでのお薦めのコースは

猫城

 まずバッハラッハは鉄道駅とクルーズ船の船着場と城と美しい町並みがあるクルーズの起点としては文句なし。

 もう一つ同じ条件の町はサンクトゴアールだ。ここは船着場から歩いてラインフェルス城に行ける。そして対岸に猫城があり、乗り換えの鉄道駅もある。

 そしてバッハラッハからサンクトゴアールまでのクルーズで、プファルツ城とシェーンブルク城、ローレライの岩を眺めながらワインをいただくというプランだ。この間約20分。

 もちろん時間に余裕のある人はそのまま船でケルンまで行っていい。ただしクルーズはやはり時間がかかる。

 ラインフェルス城や猫城を描こうとすると、クルーズはここでやめたほうがいい。それにこの後、ケルンまでの間は古城はほとんどないのだ。
私はサンクトゴアールからケルンまで列車で行って、その日のうちにケルン大聖堂をスケッチした。

これがケルン大聖堂!

ケルン大聖堂の入口
ケルン大聖堂頂部 高さ約150M
ライン川の対岸からみるケルン大聖堂

 ライン川の古城は確かにロマンチックで美しい。しかしゴシック様式(「ヨーロッパ風景画の基礎知識 ゴシックとロマネスクの違いを知っている?→」を参照)の代表作であるケルン大聖堂はそれらとは美の性格が異なるだ。

 何よりもその巨大さ。中世の技術力でこんな巨大な美が創出できたことが信じられなかった。神への信仰心と人間の創造力が結実したまさに総合芸術だ。

 かつて巡礼者がこの聖堂を目印に旅したように、ライン川沿いを旅する者はどんなに忙しくてもこの聖堂だけは絶対に見るべきだ。

 私はこの聖堂をスケッチした後、往路とは反対側のライン川東岸を列車で一気にマインツまで戻った。
 ホテルに帰り着いたのは19時。例によって早朝から一日中歩き詰め、しかし充実の2日間だったことは言うまでもないだろう。

P.S.
 今回、私の描いた水彩画の一部を「加藤美稲水彩画作品集→」で公開している。ぜひ見てほしい。
 またこのブログでは、旅と水彩画をテーマとした以下のような記事を書いている。今後も定期的に皆さんに情報を提供するつもりである。興味のある人は時々このブログを覗いてほしい。


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1件のコメント

[…]  何故ならプロフィールで書いたように(詳細はこちら→)私の大学の専攻は「建築歴史」だった。 だから「ゴシック建築」は当然知っているが、あくまで文献で得た知識だけ。実際にこの眼で本当のゴシック様式の建物を見たのはこの時が初めてだったからだ。 尖塔の高さは103メートル。ケルン大聖堂(ブログの記事はこちら→)の150メートルには遠く及ばないが、初めて見る日本人を驚かすには十分だ。 […]

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