現代建築を描く? シドニーオペラハウス

 私は基本的に現代建築は描かない。なぜか?
 別に特定の主義主張があるわけではない。ただ描く意欲が湧かないからだ。私自身、設計者として現代建築にかなり長い間携わってきた。当然設計のためのエスキース、デザインスケッチは何枚も描いた。
 だが完成した建物はなぜか絵にならないと感じてしまうのだ。

 そんな私が初めて描く気になった建物が冒頭の絵、シドニーオペラハウスだ。設計者は有名なヨーン・ウッツォン。北欧の建築界の巨匠であるグンナールアスプルンドに学んだ。言わば北欧デザイン(このブログの記事はこちら→)の実践者でもある。
 この建物は確か、私が高校の頃の美術の教科書に載っていたと思う。つまり建築界だけでなく、芸術界でその美しさが認められていた建物である。
 シドニー湾に浮かぶ白いヨットのような姿は本当に美しい。ハーバーブリッジと並ぶ構図も素晴らしい。調和の取れたシドニー湾の美しさに惹かれて知らぬ間に3枚のスケッチを残していた。
 オペラハウスの美しさの秘密はまずその立地だ。日本の第2国立劇場(オペラハウス)のコンペが話題になった時、国際コンペとして「シドニーオペラハウスと比べ立地、景観が貧しい」と批判があったことを思い出す。
 海に浮かぶ白い建物・・・まずこれだけで相当下手な設計でない限り、十分絵になる。だがそれだけでは、普通の現代建築だ。美しさの最大の秘密はやはりその特異な形態だろう。
 この建物、普通の観光写真では一体に見えるが、実は3つの建物に分かれている。レストラン棟、大ホール棟、中ホール棟だ。
 それが岸から見ると重なり合って一体の美しい姿となる。まるで魔法のようだ。
 もっともあの壁と屋根の曲線を実現するための構造計算と施工は魔法では解けない。とんでもなく複雑な難工事であったらしい。鉄とコンクリートで(比較的)簡単に設計、施工できる現代の建物とはやはり一線を画している。

 さて絵の話をしよう。
 すでに気づいた人もいるかもしれない。30年前に描いたこの絵、水彩紙ではない。それどころか普通の画用紙よりもさらに薄い。本当は水彩絵具など塗るための紙ではないのだが、帰国してから、ペン画だけでは寂しいと、無理やり水彩を施した覚えがある。
 ただでさえ水彩画で白い建物を描くのは難しい。油絵のように下塗りの上に輝く白絵具を塗るわけでない。画用紙の白を残すだけだからだ。
 それでも白い壁の角度が変わる曲面部分に赤や黄色やブルーを対比させて塗る。水彩紙でないので、色がにじみながら広がり、各色が微妙に重なり合うということはない。筆跡がほとんどそのまま見えるだけだ。悪戦苦闘した後が見えると思う。

 それでも、この絵は私が初めて描いた現代建築のある風景としてとても思い入れがある。
そしてもうひとつ思い出がある。せっかく来たのだから、内部も経験しようと、まず3つの棟の中では一番小さいレストラン棟で食事をし、そして大ホールでオペラを見ようとした。この日の演目は「サンタのクリスマスコンサート」。
ギラつく真夏の太陽を反射して輝くあの屋根の下で、トナカイに引かれたサンタクロースが踊っている。「真夏のサンタ」もこの絵の思い出だ。
 なお、残念ながらこのスケッチの後、私はやはり一枚も現代建築を描いていない

p.s.
この時と今の私の風景画の作成プロセスはかなり違う。興味のある方はこのブログの記事を読んでほしい(詳細はこちら→)
シドニ-でのペンによる旅のスケッチは別の記事で書いている。興味ある方は御一読を。(詳細はこちら→

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