写真があればスケッチは要らない?

写真を見て絵を描く人へ

 最近はカメラの性能がとても上がって、私のように、「スケッチは現地で!」という人は少数派らしい。

 もちろん私は科学技術、メカの話は基本的に大好きなので写真を否定する気は全くない。現にアトリエでの着彩はもっぱら、自分で撮ったお気に入りの構図の写真を参考に水彩画を描いている。

 だが、ことスケッチに関してはやはり自分の目で見たものをその場で紙に映すことが好きだ。いやその方がいいと思っている。

 今回は写真とスケッチの違いの一例を示そうと思う。

乾邸を撮影!

 今回取り上げるのは神戸にある有名な洋館「乾邸」だ。この建物、有名な建築家「渡邊節」が設計した住宅で現在は神戸市が管理している。JR住吉駅から徒歩20分くらい。ちょっと遠いが歩けない距離ではない。

 冒頭の写真を見ていただきたい。この建物をまだ神戸市が買い取る前、解体されるかもしれないという時に、偶然この建物で「お茶会」が開催されるという新聞記事を見て、慌てて駆けつけた時のものである。

 ご覧のように、阪神間モダニズム(「日曜画家の町・・・神戸を歩く→」を参照)の建物らしく、外観は洋風であるけれど、様式的ではなく個性的なデザインで、細部の造作のデザインは繊細で日本人の感性にぴったりだ。

 だが、困ったことにこの時持っていたのは当時買ったばかりのデジタルカメラ。それなりに最先端の物を買ったつもりだったが、やはり住宅を撮影するには無理があった。

 「華麗なる一族」の映画撮影にも使われたという、吹き抜けの居間の大階段は引きが足りなくてカメラに収まらない。

 それならばと、庭に出て建物を写そうとしたが、ご覧の通りやはり、全体は写らない。3分割してやっと収まる大きさである。これでは有名建築の魅力を撮影したことにはならない。

乾邸を描く!

 それならばと、スケッチをすることにした。幸いこのときはF0のスケッチブックとペンを持参していた。

 写真には収まらなくても、視覚にはなんとか入る。建物のプロポーションはスケッチブックのプロポーションとほぼ同じ。屋根の両端、煙突の先端、地面をスケッチブックの端にそれぞれ位置を決める。

 今回は正面図なので、透視図法(「」を参照)はほとんど考慮する必要はない。単純に2階の水平ライン、両翼の縦の分割ラインを引く。あとは順に建具や小屋根を描きたしてゆけばいい。30分ほどで完成だ。

 ご覧のようにカメラには収まらなくとも人間の目に収まればスケッチは可能だ。しかも広角のレンズを使うと画像が歪むが、絵ではそれほど意識しなくとも、ちゃんと垂直線は正しく引いている。

 私が、現地でのスケッチにこだわる理由の一つがここにある。

あなたも現地スケッチにチャレンジを!

 今は神戸市の施設になったこともあり、内部は公開されているようだ。写真では撮影しにくい構図をスケッチで収める。是非試してほしい。建物のスケッチの訓練にもなるはずだ。

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