東北の温泉街と武家屋敷を描く!?

私は水彩画作品制作の取材のため、毎年国内の重要伝統的建造物群保存地区を取材することにしている(「美緑(みりょく)空間へようこそ!→」を参照)。

そして今年は岩手県花巻市を訪ねた。なぜこの町を選んだか・・・。
直接の理由は私の地元、神戸空港から花巻への格安の直行便が出ていることを発見したからであり、岩手県はまだ私が一度も絵にしたことのない土地だったからだ。

いつもは、かなり綿密に取材の場所とスケジュールを自分で決めるのだが、今回はちょっと変わった方法を使ってみた。そう、今話題のChat GPTに行き先を聞くのである。

私が水彩画家であることを条件指定し、花巻空港から近い、絵を描くのにふさわしい場所はどこか聞いてみた。その答えが表題の温泉街と武家屋敷街だったのだ。

武家屋敷街は「金ケ崎町城内諏訪小路」という。岩手県唯一の重要伝統的建造物群なので選ばれるのは当然なのだが、もう一か所は「花巻温泉」と答えが出た。彼(Chat GPT)によればどうやら「古き温泉街の風情」が絵になるらしい。
それでは取材結果を報告しよう。

花巻温泉と台(だい)温泉

Chat GPTによれば確かにこの町の温泉街の歴史は古く大正時代にはすでにリゾート地として開発されていたようだ。だが当時の温泉街の風情は現在はなく、新築の大きなホテルが4棟あるのみである。唯一、当時を偲ばせるのが「旧松雲閣」という純木造の建物だが、現在は全く放置され、森の中で朽ちている。当然立ち入りはできない。
絵にならないとは言わないが、彼(Chat GPT)が言う「古き温泉街の風情とは」程遠い。

ホテル群の風情はさておき、周囲の自然は東北地方らしく雄大で素晴らしい。特にホテルから徒歩10分程度の渓谷にある「釜淵の滝」はお勧めだ。
濃い緑の隙間から差す光に照らされると、流れ落ちる水しぶきが反射し、とても美しい。

地元の観光地図によると、「花巻温泉」から歩いて30分ほどの距離に「台温泉」がある。こちらは比較的小さな旅館が密集しており、それなりに温泉街の風情が感じられる。
ただし、残念ながら近年すっかり客足が落ちたようで、半分以上の旅館が閉鎖状態。絵にするには忍びない状態だった(上写真参照)。


そんな中で一軒だけ目を引く建築がある。「中嶋旅館」という。店先で掃除をしていた旅館の方にパンフレットが欲しいとお願いしたが無いという。仕方なく外観写真だけ撮影した。様式的な木造和風建築で、まるで「千と千尋」に登場する湯屋のよう。次に来る機会があればぜひ泊まってみたいものである。(上写真参照)

さてもう1ヶ所の見どころが「金ケ崎町城内諏訪小路」。こちらは国の選定したれっきとした「重要伝統的建造物群保存地区」。同じく東北地方にある角館の武家屋敷群(「水彩で描くみちのくの風景 角館→」を参照)に匹敵する町並みを期待した。

だが残念ながら、武家屋敷の「町並み」はほとんど感じられず、村落のあちこちに藁葺きの家屋が点在するのみだった。
武家屋敷通り本来の姿は、正面に冠木門、敷地は生垣に囲まれ、大木のある広い庭の奥に屋敷が建つ・・・はずなのだが、生垣はその面影が残るものの、門は消え、奥にはハウスメーカーの現代住居が並ぶ。

正直いえば絵になる町並みは全く見られなかったと言って良い。
観光客もほとんどいないせいか、数少ない保存施設も休館日が多く、私が訪れた日も内部はほとんど見られなかった。

それでも、せっかくきたのだからと、一応武家屋敷通りらしい写真は撮った。
私と同様に古い町並みに興味のある方は参考にしてほしい。

P.S.
帰ってからさっそく「釜淵の滝」を水彩画にしてみた(下図参照)。建物がない「滝」だけの風景は正直言うと私にとっては初めての題材だった。水しぶきの表現に苦労したが、それだけに東北の風景として印象深い一枚になったと思っている。

P.P.S.
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