水彩紙の基本を思い出そう!
最近、人物画を描くときにアヴァロンの水彩紙を試している。以前にも書いたように、ラングトンの水彩紙がやたら風邪引き状態(「もっと知りたい水彩画の魅力!水彩紙とは?→」を参照)になるからだ。
水彩紙の基本についてはこのブログで以前に書いている(「水彩画入門!始めに買うべき道具は?→」を参照)が、画材店に行って、改めて相談すると、やはりコットン100%に勝るものはないとのこと。
アヴァロン紙の特徴
そこでたまたまその時、アルシュ紙の半分以下という値段で買えたスケッチブック、アヴァロンを試してみることにしたのだ。そしてつい先日一冊分を使い切ったので、今回はその総評である。
スケッチブックのタイプについて
まずスケッチブックのタイプはリング閉じだった。旅先で多くの風景画を描くには、バラバラにならないリング閉じが便利だ。
しかし人物画の場合は、室内で描くので、保存について気を使う必要はないし、なによりリング閉じの場合は水をたっぷり使うと波打ってしまう。
特に私の人物画(「素描をデッサンだけで終わらせない!私の人物画作法とは→」を参照)は鉛筆で明暗を取った後に、たっぷり水を使うウォッシュ画法なので、最近は波打たない4片をのり閉じしたブロックタイプの方がいいと感じるようになった。
鉛筆との相性は?
次に、デッサン時の鉛筆の使い勝手。おかしな引っ掛かりもなく、描きやすい。4Hから4Bまで美しいグレーが表現できる。練りゴムの使い勝手も良い。表面が痛むこともない。
ただし水彩絵の具を塗る時に気づいたことがある。下地に引いた鉛筆の粉の定着がよろしくない。水を引くと粉が浮かび上がって、画面が若干黒くなる。
もっともその後、絵具を塗ると気にならなくなるが、黒ずむのはやはり少し抵抗がある。
水や絵具との相性は?
透明水彩絵具を載せた時の絵具の吸い込みは早く、かつにじみの広がり程度は極めて適切だ。
例えばモンバルキャンソンなどは吸い込みがとても遅い。いつまでも紙面上に水滴が残っている感覚がある。それに比較すると、とても使いやすい。
にじみ具合も(筆と水の具合いにもよるが)筆の外形から大きくはみ出すということはなかった。滲むエッジの形も自然だ。まあコントロールしやすい紙だと言えるだろう。
絵具の発色はとてもいい。紙の色は純白なので塗り残した部分の白はとても美しい。
表面はコールドプレス、いわゆる中目だが、以前使っていたラングトンに比べるとやや目が荒く、人の肌を表現するにははやや、紙の目の大きさが気になった。
紙の強度は?
そして一番不満が残ったのがマスキングインク(「水彩画の道具 マスキングインクって何?→」を参照)に対する耐性。表面強度が弱すぎるのだ。
具体的に言うと、マスキングインクを剥がすときに紙が破れてしまう。特に紙に水分が残っているときに剥がすと、表面が丸ごと削れてしまうイメージだ。
ご存知のように水彩紙のにじみ具合は表面のサイジング剤によるところが大きい。サイジング剤が剥離し、紙の断面が露出した水彩紙に色を落とすとあっという間に黒ずんだ別な色になってしまう。(「水彩紙が風邪をひいた!どうする?ベルガモのスケッチより→」を参照)
はっきり言って絵にならない。相当に注意が必要だ。
まとめ
というわけで、発色やにじみ具合、コストパフォーマンスでは満足だったものの、マスキングインクに対する弱さ、鉛筆の粉が浮く現象が気に入らず、今はイタリア製ファブリアーノを使っている。
この紙は未だに100%手漉きで作られているらしい。そのせいか、値段はアヴァロンとアルシュの中間程度でありながら、先に挙げたアヴァロンの欠点がない。
アルシュを除けば、今のところの私の最もお気に入りの水彩紙と言っていい。皆さんの水彩紙選びの参考になれば幸いである。
P.S.
このブログの関連する記事は以下のとおりである。興味のある方は参照してほしい。
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■水彩画の道具と基本
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