「絵を描くことであなたの人生は充実する!」

■「美緑(みりょく)空間」とは?

 このブログのタイトル「美緑(みりょく)空間」は私の絵描きとしての世界観を表している。

 「美緑」とは生命感のこと、「空間」とは人の存在する場のことだ。 その二つが一緒になった美緑(みりょく)的な空間を描くことが私の創作活動の目的だ。

 ゆえに私の絵には、自然と共にある人や建物は登場するが「人を寄せ付けぬ秘境」は登場しない。誰もが自分の部屋に飾って安らげる、優しい絵を描きたいのだ。

 そして絵は美術館で見るものではない。 自分の身の回りで、いつも目に触れるものでありたい。

 だから出来るだけ多くの人に「アートのある生活を」提供したい。 いずれは世界中の家庭に。

 それが私の夢だ。

■絵描きとは何をする人?

 夢の実現に、何をすべきか。私の絵描き活動を紹介しよう。

異国の情景を求めて旅をする。
 毎年海外へスケッチ旅行に行くことにしている。といっても私の生活にそれほど金銭的余裕があるわけではない。
 ただ、生涯で描きたいと思う場所を、リストアップすると、残りの人生、毎年スケッチに行かないと描ききれないと悟っただけだ。
 だから人生の予算のうちの「海外スケッチ費用」を絶対的なものとしてカウントしている。
 生涯計画のなかで年間20万円程度の旅行費用など、誰でも、きっと何とかなるはずだ。なにしろ朝から晩まで、初めて見る異国の美しい風景を好きなだけスケッチできるのだ。
 これ以上の人生の喜びは無い。(私の体験談はこちら→https://miryoku-yoshine.com/category/journey-world/
 絵の好きな人は自分で、描きたいところをリストアップしてみてほしい。そして生涯のスケッチ計画をしてほしい。
 私と同様、きっとすぐに、来年の飛行機の早割りチケットを予約したくなるはずだ。(海外スケッチ旅の心構えはこちら→https://miryoku-yoshine.com/overseas-sketching-knowledge/

旧き良き日本の風情を求めて旅をする。
 個展の計画をするときは、海外だけでなく、日本の風景もあったほうがいい。
必ずしも見に来てくれるお客様が海外の風景にあこがれているとは限らないからだ。
 私の経験で言えば、日本人なら誰もがあこがれる風景がいい。「ここ、行ったことがある!」とわかるとそれだけでその絵に好感を持ってもらえる。今までに売れた風景画はたいていそのパターンだった。
 日本の旅は年初に一年分の計画をする。行く先は国が選定した「重要伝統的建造物群保存地区」からリストアップしている。現在全国に120箇所ほどあり、私が描いた町はまだ約30箇所に過ぎない。こちらも出来れば生きている間に全て描きたいと思っている。楽しみだ。

魅力的な女性を描く。
 美しい女性を見て感動するのは誰でもできる。だが、その女性の魅力を自分の手で画帳に表現することは絵を描く人にしかできない。そしてこの楽しみは絵を描かない人には永遠にわからないのだ。
 しかし実は人物画を描こうとすると、たちまち直面する問題がある。初めての個展で人物画を出品したとき、友人の最初の質問はほとんど「モデルは誰?」だった。 つまり、風景は自分で好きに対象を選べるが、人物はそうはいかない。相当の「大家(たいか)」と呼ばれる画家でも好みのモデルを探すのに苦労しているそうだ。
 私の解決法は近所の「人物画教室」に通うこと。来ている人が全員でモデル料を分担するので安く済むからだ。もちろん、モデルさんも、服装も、ポーズも自分の望むようにはならない。それでも画力の向上に枚数を描く事は絶対に必要だ。大いに利用させてもらっている。

作品集「美緑(みりょく)空間」

作品集を執筆、出版する。
 最初の個展のとき私の作品をテーマにした本「美緑(みりょく)空間」を自費出版した。作品制作時の想いを添えている。わかりやすくて面白いとなかなか好評だった。
 そして個展よりも書籍はより多くの人に美緑(みりょく)空間の世界観を伝えてくれる可能性がある。だからいずれVol.2も発行したいと考えている。

美術館、博物館の作品を観て感性を磨く。
 アートにはインプットが必要だ。
どんな天才芸術家でも作り続けるだけの行為、アウトプットだけを続ければいずれアイデアは枯渇する。そうならないために、インプットつまり美的な刺激が必要だ。
 自分が描くジャンルの絵を見ることだけがインプットではない。敢えて違うジャンルの作品を見ることも多い。(例えばこちら→https://miryoku-yoshine.com/the-wonder-of-the-tea-house/
 刺激は美術館だけではない。歴史的な建造物にも美的感覚は刺激される(例えばこちら→https://miryoku-yoshine.com/ohtu-city-anou/)。

このブログ「美緑(みりょく)空間」で情報発信する。
 私がブログを始めたのは約10年前だ。個展を開く自信も、具体的戦略も無かったころ、なんとなくブログなら自分の感性を発信できるのではないかと考えたのだ。
 だがネットによる情報発信効果は私の予想を超えていた。例えば、最初の個展を開いた当時、訪れる人は私の知り合いばかり。案内状を見て作品を目的に来てくれる人はほとんどいなかった。
 ところが前回の個展は、半数近くがSNSを含めたネット情報をみて来てくれたお客様だった。つまり知り合いだから来たのではなく、絵を見たいから来た人が大半だったのだ。
 ネットを利用した情報発信は今やアーチストに欠くことのできないもうひとつの武器だと思っている。

■個展を開くだけで満足してはいられない!?

2度目の個展風景

 幸い、過去3回の個展は好評だった(と思っている)。自分の作品を見てもらい、感想を聞き、見知らぬ人とコミュニケーションが出来る。
 実に楽しい。喜んでもらい、絵が売れれば収入も得られる。金額の多寡ではない。サラリーマンの給料とは一味違う報酬だ。
 でも実は気がついた。このまま個展を繰り返すだけの活動でいいのだろうかと。もちろん私個人はそれなりに楽しく充実した人生だ。
 しかししょせんは私一人の活動。絵が売れればその作品はお客様一人の物になり、「より多くの人に」見てもらうことは出来ない。
 まして「全ての家庭にアートを」提供することなど永久に出来ない。もちろん大作家の作品ならば画商が企画し、バイヤーを世話し、相当の高値で売るという従来の商業的形態はある。
 だが、そんな高値売買の、限られた時間と場所と人脈が支配する世界では、普通の家庭が、いや世界中の家庭で「絵を飾って生活を楽しむ」ことはできないのだ。

■ブログ「美緑(みりょく)空間」を訪れたひとへ

 そこで提案がある。たぶんこのブログを訪問してくれた方は、絵を見るのが好き、あるいは自分でも少し描く、あるいはすでに相当描けるセミプロの人だろう。
 絵を見るのが好きな人はまず自分で描いてみてほしい。少し描ける人は、画力をつけて、リビングに飾ってもらえるレベルになってほしい。セミプロの人は、個展を開いて作品を少しでも多くの人に見せて、感動させてほしい。
よく考えれば「全ての家庭にアートのある生活を」提供するのは私だけである必要はない。
 感動させる人が多ければ多いほどいいのだ。

■アートギャラリー「美緑(みりょく)空間」のメンバー募集

 先の提案は、言い換えれば、私の個人的活動目標を皆さんに押し付けるというものだ。
 なんて身勝手な。
 そこで考えた。ネットの持つ情報発信力の可能性は先に述べたとおり。この際このブログを利用して私のような絵描き活動をしてくれる仲間を集めたい。
 名前は絵を描いて見せる場なのでとりあえず「美緑(みりょく)空間アートギャラリー」とし、そのメンバーを募集したいと思う。
 入会資格は絵が好きなこと。それだけだ。当然会費は無料だ。自分で絵を描き、いずれは絵描きとして活動をするために必要な情報をこのギャラリーメンバーで共有したい。具体的な内容はメンバーになってから・・・。

メール配信その他のシステムは現在構築中だ。もうしばらく待ってほしい。

P.S.
 私のブログには以下の5つのカテゴリがある。
「スケッチの旅 日本編」
「スケッチの旅 海外編」
「絵画上達法」
「絵描きとして生きるには」
「ためになる美術講座」
 どれも絵を描こうと思う人にとって有用な記事だと自負している。しかし残念ながら私の経験または意見を一方的に発信するだけのものだ。

また仮に来訪者とメールアドレス交換をして個別に意見交換するとしたら、必ずしも私の考えに賛同しない、不特定多数の人に対応しなければならない。
 これでは、相当の手間がかかり本来の活動目的とずれてしまう。だからこのブログとは別に、世界観を同じくする特定の仲間とサークル的な活動をする場を設けたいと思ったのだ。
 ギャラリーメンバーは最低限自分で絵を描き、上達し、人に見せて、喜んでもらうことを目指してもらいたい。もちろん私の知識と技術の提供は惜しまない。しかし単なる画力向上が目的ならばそのための出版物はいくらでもある。ここではむしろメンバーとのコミュニケーションを大切にしたいと考えている。
 私の作品の制作プロセスやそれについての個別の質問を受けようと思う。これから絵を描くという人には大いに参考になるはずだ。すでに画力のある人は、作品を見せてもらい、メンバー間でのテクニック自慢をしてもらってもいいだろう。
 メンバー全体の実力が上がってくれば、ネット上で展示会を開くのもよい。いずれは(適正価格で)売れる仕組みも作り、世界中に広がれば「美緑(みりょく)空間」の本来の夢の実現に近づくことになる。どんなメンバーが集まるかもわからないので、 具体的な方法は未定だが、メンバーが集まれば意見交換して構築してゆく予定だ。

水彩画入門!初めに買うべき道具は?

水彩画家の定義とは?

 水彩画を描き始めたあなたが将来、個展を開くとしよう。当然会場には「水彩画家」と自分の職業を記した名刺をおかなければならない。
 さて、その時あなたは何をもって「水彩画を描いています」と言うのだろう?もちろん誰もが唸るほどの表現力をすでに身につけていれば問題無い。しかし現実的には画力はずっと向上し続けるもので、どの程度なら「水彩画家」であるという定義などないし、まして医師や弁護士、建築士のような国家資格があるわけではない。
・・・・・・・・・・・
 でも実は、これだけは言えると言うプロの水彩画家の定義(?)があるのだ。

それは「紙」だ。

 プロの水彩画家はほぼ100%いわゆる「水彩紙」に描く。それくらい、紙は水彩画の魅力を引き出すのに重要な存在なのだ。
 (もちろん逆は真ならず。水彩紙を使えば必ずプロと評価されるわけでないが・・・)
 かく言う私は今、名刺に「水彩画家」と記しているにも関わらず、学生の頃は油絵一筋で、水彩画を極めようなんて思ったこともなかった。
 それは、子供の頃から馴染んだ画材であるにかかわらず、水彩画の表現に今ひとつ魅力を感じていなかっただからだ。

 具体的に言うと、油絵と違って色を重ねた時、下の色、あるいは下書きの線が完全に消えない。あるいは油絵の透明色のように、綺麗に色が重ならない。しかも乾くのが遅く、紙の上で色が混ざると、中途半端な筆跡が汚い色で残る。これでは油絵の魅力に勝てるはずがないと思っていた。

こんな私の認識を一変させてくれたのがいわゆる「画用紙」でなく「水彩紙」だった。
 私は学生時代の最後に、いわゆる卒業旅行と称した沖縄八重山諸島ツアーに参加した。せっかくの旅行だからと、当時の私には極めて高級であった「水彩紙(ワトソン紙)」のスケッチブックを初めて買ってみた。

水彩紙の威力とは?

 淡いアイボリーの紙面に透明水彩を含んだ筆をその上に置いた瞬間に、じわっと美しい色が広がる、普通の画用紙では得られない、あの感触は今でも覚えている。
 水分は紙に吸い込まれるのに、色はそのまま紙に残る。次の色を重ねると、微妙なにじみ具合で、美しいまま、画面の上で混ざり合う。
 沖縄の日差しに乾いた紙面にさらに別の色を乗せると筆のエッジをきかせたまま、今度はカラーフィルムを重ねたような効果が出る。
 弘法は筆を選ぶというが、水彩画に関しては間違いなく「紙を選ぶ」だろう。私が水彩画に抱いていた不満は紙が原因だったのだ。この思い出深い初めての水彩紙で描いた沖縄の風景画は今も私の手元にある。
 私は多くの人が大人になったらさっぱり絵を描かなくなる、原因の一つは、安物の画用紙紙しか使わせない子供の頃の教え方にあるのではないかと思っているくらいだ。
 そんなわけで、皆に絵を見せるつもりで水彩画を描き始めたあなたへ。普通の画用紙のスケッチブックを選んではいけない。必ず相応の水彩紙のスケッチブックを選んで欲しい。

どんな水彩紙を選ぶべきか?

 しかし実はこれはかなり難しい課題だ。というのは、試しに「水彩紙の選び方」とネットで検索してみるといい。
 相当数の書込みが見つかるが、使い勝手についてはかなり主観的で、表現にも結果にもばらつきがあり当てにならないなというのが実感だ。詳細な分析には相当の科学的知識と経験が必要となりそうだ。

 そこで今回は、最低限の知識の整理とアドバイスをしようと思う。まず、普通の画用紙と各水彩紙のコスト比較をしてみよう。
 当然値段は画材店により、あるいは在庫状況により相当ばらつくだろう。そこで今回は誰でも買えるネット通販を中心に入手できるものを送料別、消費税込みで調べてみた結果を記す。公平な比較とするため、F6号のスケッチブックを枚数で割った一枚あたりの単価で比較することとした。

 まず一般画用紙のスケッチブックは一枚当たり21円。水彩紙ではないが厚手の画用紙スケッチブック一枚40円。私は学生の頃もっぱらこのスケッチブックを使っていて、水彩紙との差を実感したというわけだ。
 そして水彩紙は300g/㎡を基本とし、ない場合は相応の重量のもので代替した。その結果およそ以下の3ランクに分けらることがわかった。

■¥200/枚前後のもの

ワトソン(混合)、ホワイトワトソン(コットン高配合)、モンバルキャンソン(パルプ)、クレスター(混合)

■¥300/枚前後のもの

ラングトン(パルプ)、ウォーターフォード(コットン)

■¥400/枚前後のもの

ラングトンプレステージ(コットン)、AVALON(コットン)、ストラスモア(コットン)、ファブリアーノ(コットン)

 つまり一般のスケッチブックと水彩紙ではコストに10倍から20倍の差があるわけだ。そしてもちろん3つのランクにはその原因がある。

水彩紙のランクとは?

 まず原料の差だ。カッコ内にコットン、パルプ、混合、コットン高配合と書いた。原則的にコットンはほぼセルロース100%であり、吸水性が高く、水彩紙として性能が良い。
 しかし天然コットンは、本来栽培地が熱帯から亜熱帯の湿潤地域に限られ、稀少でコストが高い。そこで木材から採取した繊維のうちセルロースの比率を高めて繊維素としたものがパルプであり、通常の印刷物は全てパルプ製の紙である。

 したがってコットン100%が一番値段が高く、パルプの比率が高くなるほど安価にできる。上の例では一枚400円前後のものはいずれもコットン、200円前後のものはいずれも混合である。
 ラングトンだけがパルプ100%でコットン未使用なのに一枚300円もするのは製法に描き味を浴する工夫があるに違いない。実は私はこのラングトンを愛用していた。吸水性が高く、表面がけば立つこともない。パルプとは言え、性能にはとても満足していた。
 コットンの良さは吸水性だけではない。色が白く、時間が経っても黄ばみがないことだ。
 私が初めて使用した水彩紙であるワトソン紙に描いた作品は、残念ながら皆さんにお見せできる状態にない。なぜかと言うと、紙がすっかり黄ばんで、角が脆くなっている。当然全体的にくすんでみすぼらしい絵になってしまっている。
 この耐久性のなさもその成分によるものだ。ワトソン紙はすでに述べたように、パルプ混合紙だ。ほぼ100%セルロースであるコットンに比べ、パルプには他にリグニンという成分が含まれており、これが最初から紙がアイボリーに見えた原因である。もっとも白を好む画家が多いのでパルプを白く染めて水彩紙にしたものもあるので、買った時に白ければ、黄ばまないということではない。

水彩紙の耐久性には三つの要素がある!

 一つは紙の酸性度。元々紙の成分であるセルロースは酸にとても弱い。酸に触れると高分子化合物としての結合が切れて、しなやかさが失われて脆くなるのだ。水彩紙の製造時にサイジングという滲み防止加工をする工程があるが、リグニンを含むパルプ紙ではこの過程で使用する液体が紙を酸性にしてしまうのだ。

 もう一つは光のエネルギーによる劣化。セルロースそのものは可視光に対して比較的安定しているが、リグニンはセルロースよりも光の影響を受けやすく、黄色以外の波長を吸収する構造に変わってゆく。したがってパルプ原料の紙は黄ばむというわけだ。
 もっともコットン100%であっても、基本的に高分子化合物は紫外線に弱いという性質を持つ。芸術作品の展示に太陽光が嫌われるのはここにもその原因がある。

 最後は表面のにじみ過ぎを押さえるサイジング剤。水彩紙は吸水率が高いのでそのまま水彩絵の具を垂らすと、キッチンタオルを水で濡らした時のように、しみがどこまでも広がってしまう。
 これでは流石に絵にならないので、適度ににじみが抑えられるようサイジング剤を施すわけだ。このサイジングはとても湿気に弱いらしい。実はにじみ具合や、表面強度、吸水性には文句なかったラングトンを私が最近使わなくなったのは、どうもサイジングの劣化が激しい気がするからだ。
 サイジングが劣化すると、水と共に絵具が瞬時に紙の中に染み込み、表面が黒ずんでしまう。とても絵にならないのだ。

 というわけで、ちょっと説明が長くなったが、練習用と割切るのでない限り人に見せる水彩画を描くには、コットン100%の水彩紙を選ぶことをお勧めする。
 そして水彩画らしい自然なにじみと筆のエッジを活かそうと思うと、表面仕上げはは「中目」がいい。
 「荒目」は凹凸が大きいので塗りにムラが出すぎるし、エッジを効かせにくい。「細目」は凹面に絵具が溜まりにくく、水分が広がってにじみの効果が使いづらいと聞く。

 参考までにお伝えしておくと、私は作品として描くときは、アルシュ、ファブリアーノ、アヴァロン、ラングトンプレステージのいずれかを使うようにしている。今のところこの4種類であればそれほど好みの差は感じていない。

 水彩画にとって一番重要な水彩紙。水彩画家と名刺に書くかどうか、あとはあなた次第だ。

日曜画家の町・・・神戸を歩く

神戸の魅力は異人館だけじゃない?!

 「ハイカラ」で「モダン」な町と言われる神戸。最近は京都と大阪にインバウンドの観光客を奪われ、人口も急激に減りつつあると言う。神戸に住む私としては寂しい限りだが、日曜日になるとスケッチブックをもってうろつく日曜画家がたくさんいる。そんな人のためにスケッチすべき建物と風景をいくつか紹介しよう。
 観光客に人気があるのは「重要伝統的建造物群保存地区」である北野の「異人館通り」が有名だが、それについては別の機会に譲るとして、今回は神戸の「近代建築」をスケッチすべく取り上げよう。

近代建築って何?

 建築にあまり詳しくない人のためにまず「近代建築」を説明をしておこう。 近代建築とは基本的には「古建築」と「現代建築」に対する分類だ。時代的には明治から、戦前に建てられた、西洋風建築と言っていいだろう。 シンプルに3つに分けてみる。

①日本近代建築創世記の作品・・・外国人建築家またはその直弟子が設計した西洋古典様式の建築

 具体的には19世紀のヨーロッパ建築であるネオロマネスクやネオバロックと呼ばれる古典様式の建物であり、主に官庁や銀行で採用された。
 明治維新による「近代化」そのものであり、その歴史的、政治的必然性から、東京や大阪に数多く建てられた。東京の日本銀行や東京駅はその代表である。

 威厳ある、絵に描くにはもってこいの対象だが、残念ながら神戸にはあまり残っていない。数少ない代表例がこの投稿の最初に載せた兵庫県公館である。JR元町駅から徒歩10分程度。 建物外観も内部も庭を含めた外構もほぼ当時のままのデザインが残っている。 是非訪れてスケッチブックを開いて欲しい。
 そのほかには 旧第一銀行神戸支店(現みなと元町駅)、旧三菱銀行神戸支店(旧ファミリア本社)が挙げられる。ただし「みなと元町駅」は今は駅舎となってしまったので、内部は空っぽで張りぼて状態。そして旧ファミリア本社は2019年末に外壁だけが保存された高層マンションになってしまう。この二つとも私はスケッチしているが、残念ながら、ほかの町からわざわざスケッチに来るほどの価値は無くなってしまったと言わざるを得ない。残念だ。

②上記の古典様式をモチーフに日本人設計者が
自由にデザインを深化したもの

 神戸の特徴はちょっといかめしい感じの①の建物よりもの西洋風だけど自由でかっこいい②や次に述べる③の近代建築にある。その理由は多分神戸の立地と生い立ちにある。
 明治の初頭から貿易港として、異国の文化を積極的に受け入れてきたこと、大正から昭和初期にかけては関西の富裕層の粋な文化ゾーンとして発展したことなどが理由だろう。この芸術面の運動は「阪神間モダニズム」とも呼ばれている。

 ②の建物は神戸海岸通り付近に集まっている。最も古い建物は旧居留地15番館。当時のアメリカ領事館であり、異人館風の外観なので正確には日本の近代建築とは言えないかもしれない。ただ「異国情緒」の風景を生み出した貴重な遺産だ。
 この通りに面して、商船三井ビルディングと旧日豪会館があり、今でも現役の事務所ビルとして活躍している。海岸ビルとチャータードビルは商業施設として生まれ変わっている。
 海際を歩けば神戸税関と旧市立生糸検査所が並んでいる。いずれも格調高いデザインだが、洗練された独特な装飾、目新しい曲線と文様など近代的な個性を持っている。どれも建物単体としてはもちろんのこと、町並みとしてスケッチするに最高の素材だ。

③古典様式を否定するゼセッション様式の影響を受けたもの。

この最後のタイプは三宮から東へ、新在家から六甲道にかけての住宅街にある。
 一つは現甲南漬資料館。旧社長邸だ。鉄筋コンクリートで曲線を使用したユニークな外観だが内部は和室、洋室とも当時のデザインが良く保存されており、まさにハイカラな雰囲気たっぷりの建物だ。

 そして最後が御影公会堂。円柱で支えられたまるい頂部が特徴的なモダニズム建築だ。野坂昭如原作、高畑勲監督のアニメ映画「火垂るの墓」の舞台がこの辺りで、まさに映画の画面にこの建物が登場している。
 建物の足元には石屋川が流れ、背景には緑豊かな六甲山が広がる。季節感溢れる風景は休日画家が頻繁に訪れる。
 ここは私のお薦めする隠れた神戸NO.1のスケッチポイントだ。ちなみにグーグル検索に「火垂るの墓」「 御影公会堂」と入力すると私の絵が出てくる。この建物はネット上でも人気が高いようだ。なおこの絵のような私の風景画の描き方に興味のある方はこちら(https://miryoku-yoshine.com/landscape-painting-with-pen-and-watercolor/)を参照して欲しい。

神戸の面白い美術館、博物館

用事があって出かけた先ででちょっと時間ができた。折角だからこの街の美術館でも行こうか・・・と思うことは結構あるだろう。今回は私の地元神戸の「ちょっと立ち寄るお薦め美術館、博物館」を教えよう。

▪️時間のたっぷりある方へ

 兵庫県立美術館(http://www.artm.pref.hyogo.jp/index.html)、神戸市立博物館(https://www.kobecitymuseum.jp/)へ行くと良いだろう。
 前者はJR灘駅から徒歩15分、安藤忠雄設計の現代建築、後者はJR三宮から徒歩15分、昭和初期の近代建築で特に建築に興味ある人には言うことなしだ。
 ただしこの二つはとても大きい。鑑賞時間もそれなりにかかるので、時間のない方はそれねりに覚悟して出かけよう。

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素描をデッサンだけで終わらせない!私の人物画作法とは。

素描って何?

 「素描」を「大辞林」で調べると「鉛筆や木炭などの単色の線で物の形を表した絵。本来は創作の予備的な下絵として描かれた。また、彩画と対比されることもある。デッサン。」
 つまり素描=デッサンを一生懸命練習しても、どうやらそれは将来描く本作(彩画)のために捨てられる運命にあるものらしい。
 上図はアングルの作品「ベルヴェーズ・フーロンの肖像」だ。1981年アングル展が初めて日本にやってきた時の展示会カタログからの抜粋だ。(そのカタログはアングルファンであった私の宝物だ)左は油彩画、右は鉛筆デッサン。まさに下図として描いたもののようだ。
 だが、この定義は大作家、一部の職業画家に対してあてはまるものの、大部分の初心者を含む絵描きにとっては、モノクロのデッサンもできれば作品として飾りたいはずだ。

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気になる美術イベント・・・六甲ミーツ・アート2019

 このイベントは2010年から毎年、秋に行なわれている。名前の通り、現代アートを六甲山の自然の中で展示することにより、人の出会いを生み出そうという試みだ。
 神戸市は近年人口減が著しい。インバウンドによる観光客も大阪や京都に比べれば寂しい状況だ。地元神戸住民として、また同じアートに携わる人間としては大いに気になるイベントである。
 実はこのイベントに参加するのは今年が初めて。私自身のリサーチ不足もあって今回、十分に堪能したとは言えないが、来年参加する方へのアドバイスも含めて「個人的」な感想を報告しよう。

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誰でもできるデッサン練習法とは

 絵が好き。でも自分で描くのはちょっと・・・。

 こんな人に良く出会う。もったいない。自分の好きなことをして時間を過ごすことは最高に幸せなのに。
 初心者の「自分で描くのはちょっと・・・」という言葉の裏には「失敗したらどうしよう」という気持ちが隠れているようだ。
 だから人物のデッサンをしても、風景のスケッチに出かけても消しゴムを手放さない。ちょっと失敗するとすぐに消しゴムで消してしまう。
 初心者向けの絵画教本でもこの行為はお勧めしていない。私も全く同感だ。そうはいっても人前で絵を描くなんていう行為は何年もしていない人にとって自信の無いデッサンを見せることに抵抗があるのだろう。ならばどうしたらいい?
 もちろん毎日時間をとってアトリエに向かえばいい。でも画家でもない普通の人にはそんな時間があるはずがないだろう。まとまった特定の練習時間を設けずに、たくさんの(1日一枚を目標としよう)デッサンを練習する。実はそんな都合の良い方法があるのだ。

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ペンと水彩で描く風景画の魅力とは

 透明水彩で風景画を上手に描く方法は?

 透明水彩で風景画を描くとき、その技法は大雑把に言って2つある。 下書きの線を生かして水彩するものと、線は最小限、下書きにとどめ、色だけで表現するものだ。
 前者はいわゆる「淡彩スケッチ」と呼ばれ、いろいろな教本を見ると、柔らかい(2Bくらい)鉛筆で下書きし、薄めの透明水彩で色つけをするという方法が主流だ。
 後者は透明水彩独特の発色と滲みを生かした表現を多用し、鉛筆の線は最後はほとんど消してしまうことを推奨しているようだ。最近の透明水彩を使う画家の作品もほとんどがこちらの方法だ。

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意外に知らない水彩画上達法とは

 水彩画は子供の頃から親しんだ画材。だから誰でも気軽に始められる。だが誰もがぶつかる壁がある。それは慣れて、筆の使い方も色の混ぜ方、水の含ませ方も一通り覚えた頃に訪れる。

「どこかプロの画家との違いがある。何故だろう?」

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ラインの古城を描くのは大変!?

ラインシュタイン城  グリム童話に現れる魔法の城のよう

「城」は絵描きにとって魅力的なテーマだ。

 ある意味、その国の歴史の決定的瞬間を知っているからだ。中でもドイツ、ライン川沿の古城の魅力は格別だ。ただここを効率的にスケッチするのにはちょっとした事前知識がいる。今回はそのノウハウをお伝えする。
 インターネットで調べてみると、ライン河沿いの古城はいくつもの小さな町、村に分かれている。普通の観光コースはいわゆるライン下りの船から外観を駆け足で見るというもの。そして時間とお金に余裕のある人は古城ホテルに泊まり、古城レストランで食事をするというコースだ。

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