世界遺産 ポン・デュ・ガールを描く
5月初旬。南フランスを旅した。(「絵になる風景を求めて…南フランスを旅する→」参照)
今日はその時の水彩画作品「ポン・デュ・ガール」をご紹介しよう。言わずと知れたローマ時代の遺構、世界遺産である。
そして今回のテーマはテーマは「光」と「構図」である。
まずは下描きを!
①図を見てほしい。この構図、あなたはどう思うだろうか?
現物をご存じの方は何か足りないと思わなかっただろうか?
この遺跡は橋…つまり下には当然川が流れている。だから通常の観光写真は川とポン・デュ・ガールがセットになっている。
だが私はあえて川を入れた構図にしなかった。何故か。それが先にあげたもう一つのテーマ「光」である。
訪れた時刻は朝7時半頃。
朝日がちょうど逆光となってこのローマ橋のアーチをくっきりと切り取り、漏れた光の当たった地面だけが周辺から浮かび上がったようだった。
人類2,000年の歴史にまさに光が当たった瞬間だったのだ。
さっそく、カメラにこの光景を収め、改めてアトリエで再構築したのが上の構図なのだ。
この下描きについてもう一点説明しておこう。
画面にブルーの縦横線が見えると思う。この線は現地写真を加工し構図を決めた後、水彩紙に同じ構図を写し取るためのガイドラインである。
実はこのツールは水に濡れると消えてくれる。鉛筆の下描き線を消す必要がない。水彩画にとっては、とてもありがたいツールなのだ。(「チャコペン→」参照)
光を描く!
「光」を描く構図が決まった。問題は「どう描くか?』である。
まずは完成図②を見ていただこう。自分ではそれなりに「光を描けた!」と思っている。
ポイントは3つある。順に説明しよう。
1.空の表現
この日は幸い快晴。青空が広がっていた。だが普通に空を真っ青に塗ると「逆光は」感じられなくなる。
今回は黄色→オレンジ色→水色→ブルと少しずつ色を重ね、光のグラデーションを表現した。もちろん一番明るい部分は水彩紙の白を残すことが大切である。
実は「白を残す」のはなかなか勇気がいる。塗り残しがあると永久に絵が仕上がらないのでは…という強迫観念にとらわれがちだからだ。自分のイメージを大切に、自信をもって「白」を塗り残そう。
2.橋の表現
橋の素材は古びた石である。
だからと言って茶色っっぽい「石色」を全面に塗るとやはり逆光に切り取られたアーチ橋のイメージは表現できない。もっと暗く表現すべきである。
具体的な手法は、まず太い筆にたっぷり水を含ませ、石のベース色(今回はローシェンナーを使用)を橋を塗る。
石色が乾かないうちに、やはり水を多めに含んだ青や紫を重ねている。石が積みあがる感じを出すために、徐々に濃い色を重ねるようにする。
さらに橋の下方は地面の反射を受けるのでやや明るく、上方は明るい空との対比を強調するためにやや暗くしている。この空の明るさとの対比が「光」のリアリティを決めると言っていい。
3.地面の表現
実は今回の作品で一番気を使ったのはこの「地面」である。
アーチから漏れた光が照らす部分とそれ以外の暗い部分をいかに描き分けるかが絵の出来を決めると思ったからだ。
明るい部分はやはろ「勇気をもって」水彩紙の白を残し、暗い部分はオレンジをベースにブルーと紫を重ねている。
草原と樹木の表現も重要だ。地面の光を受ける葉はマスキングインクで保護し、最後に明るい色を垂らしている。
絵の基本を忘れずに…
もちろんこの上の3つのポイントは互いに無関係ではない。実際には最初塗った空は彩度が不足していることに気づき後から色を足している。橋の組石は単調に塗りすぎたのでむらが出るようにやはり何度も調整している。
「常に全体を見ながら部分を描く」・・・基本はどんな絵でも変わらない。
P.S.
さて今回の「ポン・デュ・ガール」、あなたの水彩画制作に多少なりとも役に立っただろうか?
ご意見、ご感想のある方は遠慮なくコメント欄に記入してほしい。
また下記「美緑(みりょく)空間アートギャラリー」に参加していただいた方には私の制作テクニックなどさらに詳しくお伝えするつもりである。
あなたの参加をお待ちしている。
なおこの作品は「水彩STORE/美緑空間→」で詳細画像を公開している。併せて参照してほしい。
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