ベルガモ一人旅 切り取られた歴史の風景

コッレオーニ礼拝堂

ミラノからベルガモへ

 今回の水彩スケッチ旅。行き先はイタリアのベルガモ。中世の建物が残る、とても小さな町だ。ミラノから鉄道で1時間ほど、ベルガモ駅で降りる。
 ヨーロッパでの旅は鉄道を使っているうちはそれほど気を使わない。事前に発車、到着時刻もわかるし、駅の表示にはほぼ英語が併記してあるからだ。
 だからここまでは順調。問題はこの先、目指す丘の上の「チッタ・アルタ」と呼ばれる旧市街までの道のりだ。

 ガイドブックによれば、チッタアルタの麓のロープウェイ乗り場まではバスで行くという。チケット売り場は鉄道駅のすぐ近くで見つかった。幸い切符売りの婦人も英語が通じた。
 だが売り場前のバス停で待つが、いつまでたってもお目当のバスは来ない。バス停の表示は全てイタリア語だから、どのバスがどこへいくかなどと言う細かな情報は全く読み取れない。

 たまらず売り場に戻ってバス停の位置を聞くと、
「Go to left!」
どうやらバス停の場所を間違えていたようだ。本当に田舎の一人旅は気を使うことばかりだ。

チッタアルタの魅力

 そんなロスはあったものの、なんとかロープウェイに乗り、丘の上のチッタ・アルタに到着。
 ここは中世の頃は城塞都市。事前の情報によるとその全貌が望める場所があると言う。そこへいくにはさらにロープウェイに乗らねばならない。まずはこの街の一番上高いところから町を見る。そこから見るチッタ・アルタはさながら天空の城のようだ。下界に霞む遠景は水彩画にぴったりの画題だ。

 当然、ここでまずスケッチしようと考えた。だがこれだと思う構図は展望台には見つからず、散々歩き回った末、どこかの民家の玄関先の塀の上にスケッチブックを置いて描くことにした。幸い、家の人から注意されることもなくスケッチを終えた。

 さて、せっかく来た中世の町。少しゆっくり古い町並みを楽しもうと再びロープウェイに乗り、街に戻った。
 見所はコッレオーニ礼拝堂。ルネサンス時代の建築のようだ。正面も素晴らしい。対面する建物の2階から見た姿も美しい。この水彩画は別の記事で取り上げた。見てほしい。

 だが私が見つけた一番のシーンが冒頭に掲げた写真だ。起伏に沿って折れ曲がる通路沿いのアーチで切り取られた姿だ。
 いつも思う。ヨーロッパの町は建物で切り取られた縦長の構図がよく似合う。まさにこれもその一つだ。

路地の風景

 歩いていると、また一つそんな風景に出会った。軒先を飾る庇の濃い陰は明るい空を角度をつけてシャープに切り取る。広角レンズで無理やり建物を収めると、天空に向かう中世の建築が私の視界を埋め尽くす。圧巻だ。

 同じ中世の風景でも日本の、水郷で囲まれた藁葺き屋根の穏やかな集落風景となんと違うことか。

 民族の文化の差は建築と都市に現れるという。まさに真実だ。

 実は私は旅先でこのような「切り取られた風景」の写真をよく撮る。理由は前景と遠景両方を画面に収めることで、その土地の文化の特徴がよくわかるからだ。
 だが実を言うと、この構図はあまり水彩画作品にしていない。何故なら近景部分が遠景と比較するとあまりに拡大図になりすぎて、絵のバランスが崩れるような気がするからだ。

 そうは言っても魅力的な構図であることは間違いない。新たなテクニックが身についたらいずれ絵にしたいと思っている。

P.S.水彩スケッチ旅の記事を下記のカテゴリにまとめている。興味ある方は覗いてほしい。
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