印象派?それとも…
絵画史においてもっともフランスが輝いたのはやはり19世紀だろう。日本では印象派が一番人気だが、私はバルビゾン派の方が好きだ。
印象派の絵はご存知の通り光の表現が特徴的だが、私にとってはちょっと自然味が強すぎる。もう少し人間味がほしいのだ。
だから印象派の少し前の時代19世紀中頃、ミレー、コロー、クールベに代表されるバルビゾン派の絵が好きなのだ。
特にコローは古典的なテクニックに支えられながらも、庶民に寄り添った日常的な題材を、落ち着いたグレーの色調で、ロマン溢れる情景に仕上げてくれる。
私が学生時代毎日油絵を描いていたころ一番意識していたのもコローだった。今はもっぱら水彩画を描いているが、水彩であんな絵が描けないかといつも思っている。
「ティヴォリ、ヴィラ・デ・エステの庭園」
そんな多くのコローの絵の中で今の私がお勧めしたい絵は彼が1843年イタリア旅行の際に描いたという「ティヴォリ、ヴィラ・デ・エステの庭園」 だ。
お勧めする理由は3つある。
一つ目はこの絵、実物を2008年神戸市立博物館で見た。少年が腰掛けているバルコニーの手摺の向こうに広がる風景が強烈に脳に焼きついたから。
第二は最近テレビで見た世界遺産の番組がこのエステ家別荘を取り上げていて、カメラが映したバルコニーの風景が、かつて脳に刻まれたこの絵の記憶を再び呼び出してくれたからだ。
そして三つ目の理由は、偶然にも直後にイタリアにスケッチ旅行に出かけることになっていて、自分の目でこの光景のすばらしさを確認できたからだ。
もしイタリアに行く予定のある方は是非このエステ家別荘に立ち寄ってほしい。交通の便もよくローマから1時間足らずでいけるはずだ。その後、このコローの絵を見ていただければ私が押す理由が納得していただけるだろう。イタリア世界遺産の雰囲気とフランス絵画の精神を同時に味わえる、ある意味お得な絵画なのだから。
世界遺産とバルビゾン派両方の魅力が!
私は現地を訪れた際、件のバルコニー周りの写真をあちこち撮りまくった。コローと同じようにこの背景を利用して美しい女性像の水彩画を描いてやろうと思ったからだ。
そして半年後。私のイメージにぴったりのモデルさんにめぐり合った。長い髪と魅力的な口元。白いブラウスと緑のスカート。
遠くにかすむ山と家々。麓まで広がる緑の畑や森。青い空は開放感があって、夏風が心地よさそうだ。
少しだけ水彩画制作のプロセスに触れておこう。明暗を含めた下書きはすべて鉛筆。その上に薄く透明水彩を重ねている。陰の色は鉛筆のハッチングによるものである。
フランス絵画の再現・・・!
とは言いがたい。なんといってもモデルが日本人だからね。残念…。
P.S,
このブログの関連記事は以下の通り。興味のある方は参照してほしい。
- 「ためになる美術講座→」
- 「スケッチの旅海外編→」
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