レトロな和風デザイン?! 台南の林百貨店

 久しぶりに台湾を訪れた。以前行ったのは台北と台中。今回は初めての台南だ。
 事前に下調べをしたが「地球の歩き方」を初め、どのガイドブックも台湾の目玉は食べ物だという。もちろん私もそれなりに、美味しい料理を堪能したことは否定しない。
 だがこのブログは絵を描く人、あるいは好きな人のためのものなので、残念ながらそちらの情報は割愛する。

  さて、台南にはスケッチしたくなるような見所は多くある。そのうちのひとつ、レトロな和風デザインの建物、林百貨店を紹介しよう。
 場所は台南駅南西にある7本の道路が交差するロータリーから西へ5分ほど歩いた交差点の角にある。すでに夕暮れだったので私の外観写真が暗い点はご容赦願いたい。
 褐色のレンガ色、5階建ての建物が目指す林百貨店だ。1932年(昭和7年)竣工。第二次大戦のときに空襲でかなり破壊され、長い間放置されていたが、2014年にリニューアル、再び百貨店としてオープンした。
 一見して、他のビルとは趣が違うことがわかってもらえるだろうか。
 手前のビルは石張りと大型ガラスのモダンなデザイン、奥の建物はコンクリートかモルタルかはわからないが、低層のかなり古ぼけた建物だ。
 今、台南市の表通りにある建物は現代的なデザインか、終戦直後のぞんざいなデザインの建物がそのまま残っているか、二極化している気がする。
 この建物のように日本で言えば明治時代から昭和初期のきちんとした「近代建築」が見られることはとても貴重なのだ。

  設計者はインターネットでの記事によると、石川県出身の建築家で当時、台南州地方技師兼台湾建築会台南州支部長だった梅沢捨次郎とある。
 この建物を設計したのは40歳代半ば頃、建築家としては、脂の乗り切った年代だ。そしてオーナーは山口県出身の実業家、林方一だ。
 まず外観デザインを見てみよう。
  私がおやっと思ったのは外部にぐるりとバルコニーが廻っていることだ。一般に商業建築は古今、洋の東西を問わず、敷地境界いっぱいに建てることが多い。何故なら、少しでも多く商品を並べたいからだ。だから内部の面積を減らすことになる外部のバルコニーなどは本来ご法度のはずなのだ。
 しかし実は建築家としては、不特定多数の人が密集している百貨店だからこそ、火事のときの避難スペースとして外部にバルコニーが欲しいと思うのは自然なことなのだ。
 よく見ればバルコニーの手摺のデザインもかなり凝っている。設計者のバルコニーに対する熱情にオーナーが負けた・・・などと勝手に想像してしまうのは私だけだろうか。
 近づいて、建物の頂部を見てみると頂部を特徴付ける曲線デザイン、堀の深い窓。最上部のバルコニーはシンボリックな円形窓でくりぬかれている。実にユニークだ。

 一階廻りは、歩行者の通行スペースとして1スパン分外部に解放されている。台湾の商業施設全般によく見られる、この方式は日本統治時代に政府が指導した標準商業建築様式だそうだ。
 外周り列柱の足元、柱脚のデザインや柱頭いわゆるキャピタルのデザイン、梁型のデザインも凝っている。今見れば十分クラシカルだが当時では個性ある最新デザインだったに違いない。

  内部のほんのりと明るく、赤みを帯びた優しいインテリアの色調も当時のままだという。
 天井のランプのデザインも秀逸だ。最近は小型で明るいLEDを使うので、ランプの形は見せず、光の見せ方をデザインする方法が主流だが、こんなランプを意識する設計も悪くないと改めて感じさせられた。
 百貨店建築ではなるべく天井を高く見せたいので、天井を張らず梁は柱との接合部で斜めに構造的に「ハンチ」をとることが多い。これも定石通りなのだが、ハンチと柱頭を一体化した見事なデザインだ。

 最上階レストランのテラスに設けられた階段から屋上に上がってみた。
 土産店の入口の横には懐かしい赤いポスト。そして少し風変わりな鳥居と灯篭もある。エレベーター機械室もちゃんとデザインされている。
いよいよ日が暮れてきた。屋上の手摺上のランプに灯がともる。当然、やはりちゃんとデザインされていた。
「レトロな和風デザイン」・・・悪くない。案外現代的で新鮮だ。

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