水彩で描く風景画 台北の商家

 私の妻は毎年台湾に旅行している。理由は「食べ物が安くて美味しい」、「日本人に親切」、「豊富な薬膳食材が揃っている」ということらしい。残念ながら同行する私が好きな「歴史的な建物がある」はそのリストにない。
 台北駅に降りると実感する。台北は想像以上に近代的な大都会。特に台北の駅から東西につながるメインストリートは有名な超高層ビル「台北101」に代表される高層ビルが建ち並ぶ。少し町外れまで足を伸ばしても、異国情緒溢れる古い民家など皆無だ。
 この町に歴史的な建造物がほとんど残っていない理由をネットで調べると、詳細は不明だが、第二次大戦後、日本軍が引き上げた後の共産党、国民党の内乱とそれに伴う域内の混乱がほとんどの民家を破壊してしまったということらしい。

 かと言ってせっかく来たのに、親切な台湾の人にサービスしてもらい、美味しい食事だけ堪能して帰るだけでは芸がない。
 インターネットとガイドブックで調べると、台湾5大富豪の邸宅跡だという「林本源園邸」がどうも古民家に近いものと知った。
 アクセスは意外によく地下鉄「府中」駅から歩いて10分程度だった。日本とは桁が違うであろう中国の大富豪の生活を垣間見ることを期待したが、運悪く大半が保存改修中。
 内部を歩けたのは庭園とそれに隣接する一部の建物のみ、肝心な母屋とそれに付帯する建物は工事の仮囲いで閉ざされ、外観を見ることさえできなかった。
 庭園は「池を生かした江南式庭園」。橋の欄干や中華風の東屋(あずまや)のデザインなどは日本人には新鮮だろう。
 ただ京都の和風庭園を見慣れた私たちには、大袈裟な山や川の造形はわざとらしくて、馴染めない。スケッチしようとあちこちいい風景を探すのだが、結局私をその気にさせる構図は現れなかった。

 諦めて帰ろうとした時、目に留まったのが冒頭の風景だ。
 石と漆喰の塀、奇妙な形ののぞき窓、レンガを積んだ門の3点セットは材質、デザイン、プロポーションなど建築的な要素全てが中国的かつ美しい。
 街路樹とセットになった町並みの景観の美しさは、趣こそ違うけれども、以前にこのブログに載せた角館(かくのだて)の武家屋敷(詳細はこちら→)を思い起こさせた。
 「石と漆喰の塀」は「黒い板塀」に、「奇妙な形の覗き窓」は「丹精な格子窓」に、「赤瓦と煉瓦の門」は「銅版屋根と冠木門」にと見事な対比を見せてくれる。建物と町を描くことはその国の文化を描くことだと改めて学んだ気がする。

 冒頭の水彩画の技術的な説明をしておこう。この絵のポイントは石塀の存在感と頭上に覆いかぶさる樹木の緑。
 明度バランスは塀は暗く樹木の間から覗く空は明るくだ。反射して輝く樹木と間から見える空の輝きを表現するため、マスキングインクを多用している。
 塀部分は重厚感をだすために絵具の水分を少なめにして、何層も重ね塗りをしている。したがって今回は水をたっぷり使った滲みやぼかしのテクニックはあまり使わなかった。
 水彩画の場合は最初に方針、出来上がりのイメージを固めてから描くことが大切だ。

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