水彩で描く風景 佐渡島 宿根木(しゅくねぎ)

 佐渡島の絵を描く・・・というと大抵の人は金山と荒海を思い浮かべるかもしれない。しかし金山はすでに無く、無人の荒海だけを描くのはこのブログ、美緑空間の使命ではない。
 今回は「宿根木」という日本の町並みの中でも一風変わった、濃密な住空間を描くのが目的だ。

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水彩で描く風景 角館の武家屋敷

大樹の門 作者:加藤美稲

 今回のテーマである角館(秋田県仙北市角館町)は私にとって特別な町だ。
 というのも、私がスケッチ先としてよく選んでいる「重要伝統的建造物群保存地区」の選定制度が施行されたのは昭和51年から。今から40年ほど前、私が大学の建築学科に入学した翌年にあたる。
 実は私が古い建物をスケッチし始めたのはこの制度と「町並み保存」という運動を知ったのがきっかけだ。特に妻籠、白川郷、三寧坂、祇園、萩、角館はこの制度による第一回の選定地区であり、建築を学び始めた大学生の私に「人」と「町並み」というこの「美緑空間」にとって大切なキーワードを意識させてくれた町でもあるのだ。

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日曜画家の町・・・神戸を歩く

神戸の魅力は異人館だけじゃない?!

 「ハイカラ」で「モダン」な町と言われる神戸。最近は京都と大阪にインバウンドの観光客を奪われ、人口も急激に減りつつあると言う。神戸に住む私としては寂しい限りだが、日曜日になるとスケッチブックをもってうろつく日曜画家がたくさんいる。そんな人のためにスケッチすべき建物と風景をいくつか紹介しよう。
 観光客に人気があるのは「重要伝統的建造物群保存地区」である北野の「異人館通り」が有名だが、それについては別の機会に譲るとして、今回は神戸の「近代建築」をスケッチすべく取り上げよう。

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神戸の面白い美術館、博物館

用事があって出かけた先ででちょっと時間ができた。折角だからこの街の美術館でも行こうか・・・と思うことは結構あるだろう。今回は私の地元神戸の「ちょっと立ち寄るお薦め美術館、博物館」を教えよう。

▪️時間のたっぷりある方へ

 兵庫県立美術館(http://www.artm.pref.hyogo.jp/index.html)、神戸市立博物館(https://www.kobecitymuseum.jp/)へ行くと良いだろう。
 前者はJR灘駅から徒歩15分、安藤忠雄設計の現代建築、後者はJR三宮から徒歩15分、昭和初期の近代建築で特に建築に興味ある人には言うことなしだ。
 ただしこの二つはとても大きい。鑑賞時間もそれなりにかかるので、時間のない方はそれねりに覚悟して出かけよう。

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水彩画の名画に見る女性像

浅井忠 「少女」

 人物画を水彩で描きたいと思い始めた人へ

 水彩画をはじめたばかりの人で、人物画を描きたいと思う人は多いはずだ。でも人物画はデッサン力が要求されるし、肌の色や、微妙な表情や背景との関係など、考えることが多く、手間がかかるからと距離を置く人が多いのも事実だ。
私自身人物画、風景画両方とも好きだが、むつかしいと思うのはやはり人物画のほうだ。

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絵具の知識 透明水彩は何故美しい?

■透明水彩は何故美しい?

 子供の頃使っていた、マット水彩絵具(学童用半透明水彩絵具)を卒業し、初めてプロ用の透明水彩を使った時の感動は以前に述べた通りだ。( 詳細はこちら→
 下の色に別の色を重ねて塗ると、下の色は消されず、両方の色が澄んだ状態で重なり合う効果の美しさに不思議な感動を覚えたのだ。その不思議な感動は何故起きるのか調べてみた。

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水彩で描く風景 古都シエナ

 イタリアの古都シエナはフィレンツェから電車で1時間ほどの距離にある。フィレンツェほど大きくはないが町全体が中世の姿をそっくりそのまま留めている。

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淡彩スケッチで描く韓国 景福宮

韓国 ソウル 景福宮

 私が一人で海外スケッチ旅に出かけたのは韓国のソウル。この時スケッチ旅行での英語の重要性に気づいたのは以前に書いた通り(詳細はこちら→)。
 この時の旅は日本発の往路も韓国発の復路もともに早朝出発という観光には最悪の飛行機。2泊した割には絵を描く時間は中1日しかないというスケジュールだった。

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淡彩スケッチで描く風景画 上海

その夏の上海は暑かった。

史上最大の動員数を誇った上海万博が開かれた年、私は建築設計の仕事でこの街に出張していた。

仕事そのものは極めて順調だった。設計仕様のチェック、確認、打ち合わせと滞りなく済んで行った。

しかし初めてみる中国は私にとってまさにカルチャーショック、文化大激震(?)だった。

土地の広さも人口も密度も桁外れだ。

人が群れ、密集し、蠢き、都市が揺れている。

そして四十度を超える連日の猛暑にも増して、人々の熱気が街中に充満しているのだ。

その熱気は私が仕事を終えた夜も衰えることを知らない。当然、その日ホテルに帰ったのは深夜。すぐにベッドに潜り込む。

だが、疲れているはずなのに、何故か翌朝、陽が昇ると同時に目が覚めていた。

カーテンを開けると、眼下に黄金色に輝く上海の街が広がっている。

水平線近くに広がる大河は揚子江の支流らしい。

よく見ればすでに船も港も人も動き始めている。

ひしめいて建つ建物の影はさすがにまだまだ青い。

しかし水平線の上に輝く日光はすでに白く町を炙り出したようだ。

熱い上海の一日。始まりの瞬間をこの目にして、俄然私の創作意欲に火がついた。

ビジネスのためにやってきたので、水彩紙のスケッチブックは無い。

だが幸い、打合せノート兼設計のスケッチ用の安物のスケッチブックを持ってきていた。

早速サインペンを手にスケッチを始めた。30分ほどで線描きを終えると、それなりに満足感を覚えて、スケッチブックを閉じた。

さて、仕事だ。おっとその前に腹ごしらえ・・・・。

こうして私の初めてのアジア上陸体験は終わった。

強烈な印象を私に残してくれた上海。

スケッチブックにはペンで描かれた名残がある。

が、あの街の熱さは伝わってこない。

色を塗ろう。

帰国して続きが描きたくなった。

とりあえず透明水彩はのりそうだが、水彩紙では無いのでほとんど水分を吸ってくれない。絵具は紙の上に溜まったまま蒸発を待っている。ならばと、水を減らして濃い絵具を塗れば、筆跡だけが残り、ぼかしはまったく効かない。透明水彩の絵具を使っても、紙が悪いとその良さを引き出してくれないことを改めて思い知らされた。

悪戦苦闘。

だめだ。

これ以上塗ると、画面が濁ってしまう。

こうして完成・・・というより塗り終えたのが冒頭の淡彩スケッチである。

少しだけ解説しておこう。

透明水彩独特の表現が一切ないのはすでに触れた通り、水彩の重要な道具である水彩紙が無かったからだ。

だがそれなりの工夫をした。

サインペンはいつもの油性、0.3mm。ホテルの中で一気に描いた。時間がないので下書きはしない。多少の線の歪みや間違いは気にしない。

ペンの勢いをそのまま表現している。

次に彩色。

水彩紙ではない薄い画用紙なので、混色や重色による微妙な、奥行きある表現はできない。

したがって、重要なことはまず最低限の必要な色数を絞ること。パレットの24色全て使う必要はまったくない。

今回のテーマ言わば「上海の熱」だ。

だから、光る部分はウィンザーイエローとパーマネントローズで描き、対比させる陰の部分はほとんどプルシャンブルー、一色だけで水分を調整することによって明暗を施している。

時間がない時でも「描きたい」という気持ちは大切にしたいと思う。

「淡彩スケッチで描く」のは私の「絵に対する情熱の一表現」であると言ったら嘘になるだろうか?