ローマの教会二度目のチャレンジ!それでも描けない理由とは?

この奇妙な教会は?

 私が初めてイタリア、ローマを訪れた時の感動はいまも忘れ難い。旅先で絵を描くことの幸せをしみじみと味わうことを覚えたのもその時である(「今から絵描きを目指す人のために→」を参照)。

 朝から晩までスケッチをし、充実した旅であったことは間違いないのだが、一点だけ悔いが残っていた。それが冒頭の写真、建築家ボロミーニが設計したサン・カッロ・アッレ・クアトロ・フォンターネ聖堂をスケッチできなかったことだ。

 写真はホワイトバランスを調整し、建物のディテールを見やすくしてあるが、頂部だけが反射していることで分かるように、到着した時刻は日暮れ直前で絵を描ける状態ではなかったのだ。
 泣く泣く翌日次の都市に向かったのだが、3年後再びイタリアに旅し、この絵を描くためにローマにもどってきたというわけだ。

 文句なく誰もが「迫力があり、かっこいい」と思う建物だが、この教会、私が今までスケッチしてきた教会とはややデザインの趣が違うことがお分かりだろうか。

 ゴシック教会とロマネスク教会についてはすでに記事を書いた(「ヨーロッパ風景画の基礎知識 ゴシックとロマネスクの違いを知っている?→」を参照)。

 その定義に従えば、正面に双塔もなく、尖頭アーチも、フライングバットレスもない。だからゴシックではない。かと言ってこの複雑なデザインが初期のシンプルデザインのロマネスクであるはずもない。

ルネサンスとバロック

 実は教会建築を見る時ロマネスクとゴシックの他に、ルネサンス様式、バロック様式を覚えておくと良い。細かな様式論はまたいずれこのブログで書くことにするが、今回の建物はバロック様式の教会として有名なのだ。

 「バロック」の語源はポルトガル barroco(歪んだ真珠)だという。
 最大の特徴は各所に見られるダイナミックな曲線だ。当然これをスケッチするのは相当に難しく、時間がかかる。

二度目のチャレンジ!結果は?

 今回はそれを予測し、かなり余裕を持って朝早く出かけた。だが描こうと定めた私の場所はまともに陽が当たる。
 ローマは午前中であっても日射しが強烈だ。道路上なので木陰も一切ない。描き終えるまで体力が持ちそうにないと判断して、いったんCAFEに避難することにした。

 午後、太陽の角度を見て、頃合いを見計らいやっと再びスケッチブックを開くことができた。しかし、道が狭いのと向かいの建物が高いせいで、せっかくの順光なのに建物の大半は影の中。どうやらこの教会、信者でない絵描きには冷たいようだ。

 それでもボロミーニの名作の魅力を減ずることにはならない。複雑な曲線のプロポーションを図りつつ、何とかペンでのスケッチを描き上げた。この時点では自分でその出来にまあ満足していた。

 だが帰国してから水彩を塗り始めると、どうも気に入らない。
 というのは別の記事で述べたように白黒のペンでのスケッチ、特に水平、垂直線、屋根勾配の線だけの時は実は多少デッサンが狂っていても、気にならない(「誰でもできるデッサン練習法とは→」を参照)。

 だが、ここまで曲線が多くなると、色を塗り、陰を入れ、立体感を表現するとやはりデッサンの狂いが気になり始めるのだ。
 というわけで、このブログの「加藤美稲作品集」への掲載はもう少しお待ち願いたい。

 今回の皆さんへのアドバイスは「バロック建築には要注意!」だ。

P.S.
このブログに海外スケッチ旅の記事をまとめている。興味のある人は覗いてみてほしい。