とある休日。千葉県唯一の重要伝統的建造物群保存地区である「佐原」をスケッチしようと「JR成田駅」に降りた(佐原の町並みの詳細な記事はこちら→)。
成田空港の便利な玄関口としてこの町にホテルを予約したのだが、駅を降りて気がついた。「成田山への近道」という標識がある。
不覚にも、この時初めて知った。
そう、実はここが江戸時代から続く成田山新勝寺(成田不動)の門前町だったのだ。迂闊な幸運に感謝し、単に泊まるだけのつもりだった予定を変更し、翌朝さっそく成田山にスケッチに出かけた。
それでも、関東地方の寺社は鎌倉を除き、戦争でほとんど焼けたと耳にしたことがあったので、それ程の期待はしていなかった。
だが、参道の入り口に立ち、私の推測が間違いだったことを知る。観光地によくあるオシャレな土産物店が並んでいるかと思いきや、「うなぎ」「天ぷら」「割烹」「旅館」など、のぼりや大看板を掲げた、昔ながらの古めかしい木造の建物がひしめいている。
そしてどの建物も個性的だ。通常、私がよくスケッチする古い町並みは、妻入、平入と言った屋根の形式と方向や軒の高さを揃えることが多いのだが、この町の建物はバラバラだ。平家、2階建が混在し、中には珍しい木造3階建て、さらにその上に楼閣が載るという立派な建物もある。
もちろん平入も、妻入も混在し、屋根も切妻、寄棟が混在し、材料も瓦、銅板、茅葺が混在している。
この十分に古く、歴史的な町が重要伝統的建造物群保存地区に指定されていないのは、このバラバラな意匠にあるのかもしれない。
だが仮に学術的に問題があったとしても、絵描きから見るとこんなに面白い町はない。さらにこの町並みを特徴づけているのは参道の高低差とはるか先に森の中から顔を出している、成田山の伽藍の屋根だ。
この絶妙な構図を見て、心を動かされない絵描きはいない筈だ。私も早速スケッチをした。
そして参道を下り、いよいよ成田山へ。予想以上に広大だ。初詣の参拝者は明治神宮前に次いで国内2番目に多いというのもうなずける。
境内をゆっくり散策すれば1時間以上かかるかもしれない。公園としても整備されているようだ。
建物は私の抱いていたイメージよりもすっきりとしてどの建物も比較的新しい。国宝の建物は無いが、重要文化財が四件ある。
その中で時に私の目を引いたのは仁王門。まず屋根のプロポーション、ボリューム感がいい。そして背景の緑が美しい。階段下から見る構図もいい。
さらにこの階段周りで、早朝にもかかわらず近所の子供達が実に楽しそうにはしゃいでいる。その町の生活と密着した「門前町」ならではの微笑ましい光景に感動して、ここで一枚をスケッチした。
なお、この成田の町並みは2016年、私の本来の目的地であった佐原の町並みとともに「北総四都市江戸紀行・江戸を感じる北総の町並み」として日本遺産に認定されたそうだ。
P.S.
私の水彩画は加藤美稲作品集(詳細はこちら→)で一部を公開している。興味のある方は覗いてほしい。
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