私の水彩画は洋の東西を問わず「町並み」を描いたものが多い。その理由はトップページの「美緑(みりょく)空間へようこそ!→」で記したように、多くの家屋が並び建つ風景にはその町に住む人々の生活が色濃く写しだされるからである。
しかしこのことは逆に言えば、民家の一軒一軒はそれほど絵画的には見るべきものは無いということにつながる。
だからこのブログでも度々触れているが、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に期待して水彩画を描きに行ったのに、保存状態が悪く民家が三件と続かない町は、スケッチブックを開く気さえしなくなってしまうのだ。
さて皆さんはもうお分かりになっただろう。何故今回のテーマが「有名建築を描く」なのか。理由は美しい建築は町並み保存の良し悪しに関係なく、建物単体で「絵」になるからである。
冒頭の水彩画は世界的に有名な建築家「フランク・ロイド・ライト」が設計した「旧山邑邸」現在の「ヨドコウ迎賓館」である。(場所はJR芦屋~歩いて20分弱。詳細はホームページを参照のこと)
描いたのはあくまでも「一軒の住宅」だけ。しかし卓越したライトの造形能力は数百年の歴史が醸し出す町並みの造形に匹敵するようだ。
私はこの絵を結構気に入っていて、額縁に入れ自宅に飾っている。そしてこの絵をフェイスブックに上げたところ、かなりの反響があった。
「コマーシャルに出ている住宅ですよね」「ライト知ってます」「素敵ですね。内部も見られるのですか?」云々・・・。
「有名建築」は単なる「風景画」というジャンルを超えて人の心をつかむようだ。絵描き、いや単なるインフルーエンサーとしても大いに利用したらいいと思う。
ただし、当然だが有名建築を描けば、必ず「いい絵になる」かどうかはわからない。もちろん私たちの画力が必要なのは言うまでもないが、もう一つポイントがあると思っている。
実はこの建物、通常大切にする玄関はメインのアプローチらは木々に隠れて全く見えない。正面からは絵の描きようがないのだ。
建物の周り、周辺の丘をぐるりと一周するとこの構図が見つかる。そして実はこのアングルが最も美しく、この住宅の内部の機能を最もよく表している。
ライトは絵を描くのも得意だったという。設計する時に「絵になる構図」のことも考えて建物を配置したのではないか・・・。設計に携わる者として改めて感銘を受けた建物である。
せっかくなので、この水彩画の制作上のポイントを教えておこう。道具はいつものように油性サインペンとウィンザーニュートン透明水彩だ。
構図もいいので、普通に色を塗ってゆけばいいのだが、一か所だけ現実とは違う操作をしている。皆さんはどこだかわかるだろうか。
正解は右下のぼかしたソーン。本来は丘の緑が均一の広がっていた。だがいかにモチーフの建物に存在感があるとはいえ、画面の下半分の面積を単調な緑で塗りつぶしては、飾った時「いい絵」にはならない。
そこで、思い切って下塗りのベージュ色を残し、境界を薄くぼかしただけで、描画を終えている。わざと塗らない部分を残したことにより、画面が単調になるのを避けたと言う訳だ。
PS.
このブログでは、私が感ずる水彩画の魅力を素直に、皆さんにお届けしたいと思っている。だがもっと技術的な面をより詳しく教えてほしいという方もいるだろう。
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あなたの参加をお待ちしている。
P.P.S.
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