オーロラを見るためにフィンランドのロヴァニエミを訪れたことは以前に書いたとおり。(「オーロラの写真を使ってデジタルアートを!→」を参照)
しかし、しかし実はこの町は優れたデザインの現代建築がいくつもある「建築の町」としても有名だ。
特に巨匠「アルヴァー・アールト」の設計した建物がいくつかある。
ロヴァニエミ市立図書館
個人的に一番ユニーク、優れたデザインと感じた建物だ。1965年完成というから、もう50年以上前の建物だが、古臭さはまったく感じない。今見ても斬新な建築だ。
平面形状こそ多角形になっているようだが、外壁の色は白一色。平屋の建物の上部にトップライトが載っているだけの、一見すると平凡な建物だ。
だが内部に入ると、その豊かな空間構成に驚く。エントランスから閲覧室に入ると、一瞬迷路に入ったような、戸惑いを感じる。
その一方で斜めに交差する壁と書棚の向こうに何があるのか、天井から降り注ぐ光はどんな空間を照らすのか、階段を降りた先はどんな感覚なのか、とにかく冒険心をくすぐられてしまうのだ。
吹き抜けの下部にある半地下のオープンな窪みスペースは隠れ家のような空間だ。
オープンな閲覧室を持つ一般的図書館建築の特徴は優れた開放性にある。
だが同時に、落ち着いて本が読めないという個々の読書空間に対する配慮に欠けるという問題を抱えている。
この立体的窪みスペースは開放性と個の読書空間の確保という背反する問題を解決したものだと思う。
同時に知的好奇心の喚起という図書館が持つ究極的な目的にも合致しているような気がする。
日本の公共図書館のように騒がしくなく、静かに読書する市民の姿がとても自然だった。
なお、ユニークな椅子や閲覧机など北欧デザインの家具もすべてアールトのデザインである。
ロヴァニエミ市庁舎と多目的ホール。
この二つの建物もアールトのデザインだ。
市庁舎のロビーと食堂、ギャラリーは観光客でも入館できる。わかりやすさが第一ということです図書館のようなダイナミックな空間はない。
ただ、大きな窓からたっぷりと光を採る。
木製の北欧家具、柔らかく暖かいやはり北欧デザインの照明などアールトらしさが随所に見られる。
多目的ホールは残念ながら入れなかった。建物頂部の連なる山を思わせる曲線のデザインがユニークだ。おそらく広さと高さが異なる大小のホールが並ぶ平面計画を立面計画にも反映したのだろう。
ロヴァニエミ・ルーテル派教会。
1950年竣工。完全な現代の教会建築。
ファサードデザインは少しコミカルと言ったら叱られるだろうか。内部のフレスコ画が有名らしいが、教会としては珍しく、入場させてもらえず、見られなかった。残念だ。
アルクティクム博物館
設計者はバーチ・ボンデラップ&トラップ・ヴァーデ。
湖に向け突き出したような、トップライトと吹き抜けのホールを挟んで展示室が並ぶ構成だ。
北極圏の生活をテーマにした展示も興味深いものばかりだった。ロヴァニエミ市の人口は6万人しかいないのに、年間入場者数は10万人を軽く越えるという。その人気ぶりが分かるだろう。
町中にも北欧デザインの建物が…
町中には北欧らしいサンルーム付きの集合住宅がかなりある。家具はもちろん、ピアノやいかにもパーティルームのようなしつらえの部屋もある。「カーテンで陽射しを遮るなんて勿体無い、プライバシーよりも日光が欲しいの!」という声が聞こえてきそうな住宅ばかり。
個性を大事に、それでいて暮らしに密着している、有名な建物ではないと思うが、生活に密着したまさに北欧デザインの建物だと思う。
p.s.
私の旅は基本的に水彩画を描くためのものだ。だがこのロバニエミでは一枚も描かなかった。理由は…その寒さ。情熱だけでは絵は絵は描けないのだ。
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