ストックホルムのドイツ教会を描く
上の水彩画作品はストックホルムガムラスタンという小さな島、歴史地区の町並みを描いたものである。そして中央に高くそびえているのがタイトルの「ドイツ教会」である。
実はこの作品で私がはじめてチャレンジしたことがある。何か判るだろうか?
答えは「3点透視図法」を使用して描いたことだ。今回はこの特殊な図法についてお話ししたい。
三点透視とは?
風景画は通常一点透視、または二点透視で描くことが多い。
きわめて大雑把に言うと、一点透視は建物を正面から見た時の構図(下図左)、二点透視は建物を斜めから見た時の構図になる。(下図右)
この両者は人が水平に建物を見た時の構図だが、三点透視は斜め下方(または上方)から見た時の構図である。
冒頭の絵をもう一度見てほしい。
水平線上に消失点が2つ、さらに上空にも一つの消失点があるというわけだ。だからご覧のように非常に迫力のある絵ができた。三点透視の特徴だと言える。
それでは今まで何故三点透視の絵を描かなかったのか?
それはまず第一に、この構図を現地でスケッチするためには、じっと上空を見上げた状態でペンを走らせる必要があり、姿勢的にかなり無理があるからだ。
それだけではない。
ご存じのように二点透視でさえ、本来平行なはず屋根や軒の水平線も水平線上の二つの消失点を意識する必要がある。
3点透視はそれに加えてやはり本り平行なはずの柱や壁の線も空中の消失点に向けて傾ける必要がある。
つまり肩のこる姿勢で、とても手間のかかるデッサンをしなければならないのだ。
ただでさえ、時間に余裕のないスケッチ旅だ。今まで三点透視の絵を描かなかった理由がお分かりいただけると思う。
スケッチは辛いが…
では何故今回三点透視の絵にチャレンジできたのか?
それはある意味コロナ禍のおかげだ。
先に述べたようにガムラスタンは小さな島の上にできた町。
道も狭いので建物全体を見ようとするとどうしても視線は上に向く。だからこのような三点透視の構図が頻繁に現れる。
時間的にスケッチは困難でも写真なら撮れる。そう、もうお分かりだろう。この水彩画は私が現地で撮った写真をもとに描いたのだ。
下書きをせず、現地でいきなりペンの線を引くのが私の本来の描き方なのだが、「新しい表現」にチャレンジできたことはそれなりに意義がある。
今後はかつて撮った写真の中にある面白い構図も絵にしてゆこうと考えた次第である。
P.S.
このブログでは以下のような関連記事を書いている。興味のある方は参考にしてほしい。
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