ロマンチック街道の終点へ
ライン川の古城から始まったドイツの古城の水彩画を描く旅もいよいよ終盤だ。ローテンブルクを経てロマンチック街道の終点がフッセンになる。この町には有名な城が二つある。
ホーエンシュバンガウ城 、そしてノイシュバンシュタイン城だ。これらはバイエルン王国の親子2代の王が築いたものだ。後者はディズニーのシンデレラ城のモデルになったと言われるほど有名だ。
スケッチするなら…
有名な観光地ほど、水彩スケッチはむつかしい。この城も同様。人ごみの中で一瞬を逃さずいい構図を絵にしたい。私がこの旅で発見したお薦めの3か所を教えよう。
まず最初のシーン。冒頭のスケッチをした場所だ。
実はこの場所は普通の観光客はなかなか気付かない。何故なら「歩く」のに夢中で周りを見る余裕などないからだ。その大変な道のりを少し説明しておこう。
この城に入るためには、まず麓の観光案内場の一つしかない窓口で入場チケットを買わねばならない。1時間程度待つのは皆覚悟の上だ。
この城は山頂にある。だから中腹までバスで行く。ところがこのバスがとても少ない。だからここでまた30分以上並ぶことになる。
満員のバスを降り、無事山の中腹までたどり着く。しかし城まではさらに20分歩くのだという。
早く行きたいのに、なかなかたどり着けないも。地面を見つめてひたすら歩く…。イライラが極限に達しようかとする瞬間、突然緑の樹林が開け、白亜の城が登場する。それが冒頭のシーンなのだ。
普通の観光客ならば、とりあえずの目的地が見え、あと一息と、ひたすら先を急ぐに違いない、でもスケッチに来た私たちはこんな絶妙のシーンを見逃してはいけない。
空は快晴。緑の樹林を抜けるそよ風…さあ、心行くまでスケッチしよう。
すこしだけ私の絵の解説をしておこう。いつものように、まず輪郭はペンで描く。鉛筆による下書きはしていない。そしてこの時は、プルシャンブルーによるグリザイユ画法(「ペンと水彩で描く風景画の魅力とは→」を参照)で影を描き、透明水彩で色彩を施している。
城の正面へ
スケッチを終え、やっと城に到着した。しかし実は入場チケットは入場時間に指定がある。大抵の人は余裕を見て早く着くのだろう。時間まで城の入口を迂回して城の広場で時間をつぶす。
すると現れるのがこのファサード。壁面にはいかにも中世の城らしいパーツがずらりと並んでいる。スケッチするのに文句はないだろう。お薦めだ。
さてやっとチケットに記された入場時間が来て、いよいよ城の内部へ入る。ところが内部は中世の城の室内というよりは豪華な宮廷生活のインンテリアだ。写真は撮影禁止だったのでお見せできないが、ここまで苦労してきた割には印象は弱く、あまり感銘を受けなかった。残念だ。
シンデレラ城登場!
城を出てマリエン橋に向かう。観光案内ポスターに登場する一番有名な姿はこの橋の上から撮影したものだ。ご覧の通り息をのむ美しさ。まさに圧巻だ。
ただし、スケッチする方は要注意。何しろ狭い橋の上に観光客がひしめいている。写真だけならともかく、ここでスケッチブックを広げるのはちょっと骨が折れることを覚悟しておいた方がいい。
古城の価値とは?
上の写真は帰り道に山の中腹から、もう一つの城、 ホーエンシュバンガウ城 を見下ろしたものだ。こちらは ノイシュバンシュタイン城 にくらべると武骨な感じがする。
だがそれにはちゃんと理由があるのだ。このホーエンシュバンガウ城は14世紀ころに建てられたというれっきとした中世の城。マクシミリアン2世がそれを宮殿にコンバージョンしたものだ。
だから見張り塔も銃眼や小さな窓も 、いくさのためだけに作られた「 本物」だ。
一方ノイシュバンシュタイン城は 息子のルートヴィヒ二世が 中世の城にあこがれて外観をそれらしく造った、「偽物」の城なのだ。
だが偽物にもそれなりの美がある。「シンデレラ城のよう」と言われる彼の美的センスは馬鹿にすべきではないだろう。
何故ならこの城は現代にいたるまで観光客や画家、写真家を惹きつけ、 その観光収入が今もここバイエルン州の財政に多大な貢献をしているからだ。
素晴らしい絵、言葉もなんと言って表現していいか、ただ感動してます、学の無い自分が情け無いです。有り難う御座いました。
石川様
コメントありがとうございます。
スケッチ旅の記事はこれからも書いてゆくつもりです。どうぞお楽しみください。