台湾、高雄でちょっと珍しい教会建築を発見した。その名は「カトリック高雄教区ローズ聖母聖殿大聖堂 」。
このブログでも紹介した「駁二芸術特区」(詳細はこちら→)の東側、愛河を渡った所にある。
インターネットで調べるとアジア三大聖堂のひとつだという。なかなか有名な教会のようだ。
さて何が奇妙かというと、教会建築としてはゴシック様式とロマネスク様式の折衷。それだけでも注目に値するが、細部に施された細かな装飾のモチーフや色が中華風でトータルのデザインがとてもユニークだ。
はたしてキリスト教の美意識と合うのか?と一瞬思ったが、この日聖堂前に結婚式の衣装で写真を撮っていたカップルがいたところを見ると、それなりに市民に親しまれているようだ。
まず外観を見てみよう。正面にバラ窓がひとつ。 上に単独の尖塔がある 。ゴシックは通常双塔の間にバラ窓がある。よってこの構成は典型的なロマネスクのファサードだ。
ゴシック様式、ロマネスク様式の基本的な違いについては別の記事で書いているので参考にしてほしい。(詳細はこちら→)
内部の身廊の天井はちょっとリブが細く本当にヴォールトの荷重が伝わっているか怪しいが一応リブヴォールト。これはゴシック。
側廊の壁は柱間が全てステンドグラスになっている。これはゴシック。しかし身廊天井ヴォールトの水平力を支えるためのフライングバットレスはなし。
前述のリブヴォールトのリブが化粧材のように細かったことも考えると構造的には壁構造であったロマネスクに近い気がする。
屋根を支えるアーチは尖頭アーチでなく正円アーチ。これもロマネスクの特徴だ。
またあるインターネットの記事にはルネサンス様式であるとの書き込みがあったが、私にはどこがルネサンス様式なのかわからなかった。
ゴシックやロマネスクの西洋の教会建築と趣が違う、一番の原因は装飾と色使いかもしれない。一般的にロマネスクはレンガ、ゴシックは石で外壁を作ることが多い。するとレンガと石色が基本となり外壁に原色は通常登場しない。
また宗教建築は普遍的な礼拝の場なので頻繁に建て替えることをしない。だから年月を経て、鉱物の材料が風化した茶褐色やグレーの落ち着いた色で統一される。
ところがこのローズ聖母聖殿大聖堂は外壁こそ石のグレーだが、入り口柱の柱頭、両脇のアーチバラ窓、壁面のモールディング、側廊のステンドグラスの縁飾りなどの装飾は鮮やかな緑色だ。
しかも入り口上に鮮やかなカラーの2つの紋章があり「天主堂」という文字は赤だ。
歴史的な背景を調べてみると、竣工は1928年というから日本統治時代の建築だ。外観は石のように見えるが、時代的に言ってあるいは鉄筋コンクリートかもしれない。インターネットの記事をかなり検索してみたが、わからなかった。
ただ1995年に改修され屋根の木造は鉄骨に改修されたという記事がある。もし当初から鉄筋コンクリート造だったら屋根だけ木造にするはずはないから、元来石造なのかもしれない。とすればその石造建築という構造だけでも非常に貴重な台湾の歴史遺産だ。
なおインターネットでの記事によれば、台湾3級古跡に指定されており、2001年には高雄歴史建築10景に選出されたとのこと。
高雄に旅行することがあるなら是非たずねてみることをお勧めする。
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