台湾の古都 安平の建築とデザイン

 安平(アンピン)という街

 今は台南NO.1の観光地だが、その昔はオランダの領地だった。
 17世紀初頭のいわゆる「大航海時代」の中国の明との領有権争いに勝ったからだ。台湾はずっと中国の領土であると思っている人が多いと思うが、実は台湾最古の「都市」であるこの安平を築いたのはオランダ人だったのだ。

安平の描きどころ?

 オランダ人が築いた代表的な建築がいまでも残っている。安平古堡(アンピン グーバオ)と呼ばれる城砦だ。

 城壁はレンガ造。手摺りの穴空き部分が独特のデザインだ。ガジュマルの大木とテラスに据えられた砲台が歴史を物語っている。本当は水彩画にしたかったが、今回は時間のない旅だったので、とりあえず砲台、ガジュマルの木、城砦だけペンでスケッチをしている(上図参照)。

 だが歩いてみると、下の写真のように安平はスケッチするのにふさわしい場所がいくらでもある。
時間に余裕のある方は、ここ安平でじっくりスケッチすることをお勧めする。

 もっとも、この町がそのままオランダ人のものになったのかというとそうではない。
 1661年、有名な明朝の軍人・鄭成功がオランダ軍を追い出し、今度は鄭政権の城となったのだ。

 上の写真はこの町の歴史の証人である 「ツリーハウス」だ。長い年月を経てガジュマルの木がレンガ造りの倉庫の壁や屋根を突き破ってしまった。 内部は有料だが観光客に解放されている。

 ただしガジュマルのパワーと歴史の重みを感じさせる沈黙の空間に、コミカルなキャラクターが並立して展示されている。主催者の趣味なのか、あるいは作家の自己主張なのかわからない。せっかくの展示が台無しだと感じた。ちょっと残念。

路地の魅力

 安平老街は当時の城下町、今は商店街だ。
 そのメインストリートは海産物をメインとする土産店やレストランがずらりと並んでいる。

 だが私が見て面白いと思うのはやはり路地裏だ。レンガ造りの民家が多い。陰鬱な空間になりがちだが、鉢植えの緑で目を癒し、ところどころに空いている入口は 覗くと、店の中庭につながっていたりする。

 ガジュマルの木をモチーフにした落書きなどはとてもしゃれているとおもう。
 通常商業建築を設計する時は、なるべく落書きをされないような材質、管理動線を考えて通路を設計するのだが、たまにはこんな生活が表に出た空間も悪くない。

 レンガ造りの民家はとても味がある。台北台中にはレンガ造りの町並みはほとんど残っていないのでとても貴重な歴史遺産だ。

 ①の写真は塀がレンガの透かし積みになっていた。熱い台南の気候に合わせて風通しを良くしたかったのだろう。沖縄にも同じような塀がある。南国共通のモチーフのようだ。

 17世紀から建っているとすると300年以上の年月を経ていることになる。当時のままのものがあるのかどうかはわからないが、ほとんどがレンガの上にモルタルを塗って補修している。

 そんな中で②③の写真はレンガが比較的新しそうだ。観光客を考えた町並み保存意識の高まりのせいなのかもしれない。

 古いということは、当然身近なところに宗教施設がある。路地の一角、例によって屋根先端が反り上がる、中国独特の寺院がここにもある(④の写真)。

どの町並みも魅力的だ。いずれ水彩画に仕上げて、このブログに掲載したいと思っている。お楽しみに。

P.S.
このブログにいくつか参考記事を載せている。興味のある方は参考にしてほしい。