風景画の一番大切なもの
それは「構図」である。今回の画題である「清水の舞台」だって同じこと。
まずは自分の足で歩き回って「ここ」という構図を見つけよう。
けっして土産店で買った絵葉を模写したりしてはいけない。
理由はスケッチ力が身につかないこともあるが、何より自分で「いい構図を見つける」という絵を描く楽しみの一つを捨ててしまうことになるからだ。
清水寺は実に見どころが多い。描く場所に悩む必要はない・・・と言いたいところだが、実はいい構図を見つけるのはとてもむつかしい。
観光客が多くてなかなかスケッチブックを広げるスペースが空いていないからだ。
良い構図を探す!
良い構図は自分の足で探そう。幸運なことに私が訪れた時、偶然この場所が空いていいた。柵の前に陣取ってさっそく構図を考える。
遠くの山並みが斜めに空を切り取っている。清水の舞台は画面の中央、やや上へ配置する。中景から前景にかけて森と緑道が続き、中ほどに梢の間から光の当たる地面が覗いている。
うん・・・なかなかいい構図だ!。
アトリエで水彩を!
今回の着彩のポイントは「緑の距離感」をいかに表現するかである。水彩画では以下のような最初の計画がとても大切だ。
- 寺の背後の山は手前よりも青みを増した緑とする(空気遠近法)
- 中景の緑は明るい、鮮やかな緑に
- 近景の緑は影を濃く。
- 葉のハイライトにはマスキングを利用して立体感を出す。
制作のプロセス(上図①図から⑥図を参照)
- ペンによるスケッチ。
紙はファブリアーノの水彩紙(ブロックタイプ)。ペンはtachikawaイラスト用の万年筆を使用している。初心者はペンによる下描きは敷居が高いと思うかもしれない。
だが実は案外簡単だ。興味のある方は「下書きはいらない!建物のある風景をペンで描く→」を参照してほしい。理論を知れば怖くない! - 空を塗る
空の部分に水を引き、上方を濃い青(ウィンザーブルーグリーンシェード)で、下方にはコバルトブルーを垂らす。
山際は紙の色を残すように、明るくグラデーションでにじませながら描く。これは水彩画独特の表現技法である。 - 背景の山並を描く
やや青みのある緑(ウィンザーグリーンブルーシェード)とサップグリーンとベージュ色(ウィンザーイエローとパーマネントローズの混色)を画面上で垂らし、なじませた。やはり水彩絵具はすべて画面上で混色している。 - 寺と近景の森を描く
ウィンザーイエロー、サップグリーン、メイグリーンをやはり滲ませつつ置いてゆく。ここまででファーストウォッシュ完了だ。 - 全体に影を入れる
遠くの明暗は絵具の水分を多くし、近景の明暗は水分を減らし、濃く、強くする。 - 仕上げ
建物や木の固有色を塗り分け、木立の彩度を調整する。
全体をもう一度眺め、最暗部に一番濃いグレー(サップグリーン、コバルトブルー、パーマネントローズの混色)を入れ出来上がり。
P.S.
今回のテーマは水彩画の「構図と距離感」。でも水彩画にはマスターすべきテーマがいくらでもあると言っていい。リアルタイムで私が気が付いたことをこのブログで発信しつづけるつもりである。
是非次回の記事も読んでいただきたい。きっと水彩画好きのあなたの琴線に響くに違いないと思っている。