私の作品は水彩画が中心だ。しかし実は最初の個展(「失敗しない個展の開き方→」を参照)の時、
ペン描きイラストを展示した
その中で意外に人気があったのが、ホテル客室の平面を描いたもの。そのうちの一枚、東京ニューオータニ・インのエグゼクティブシングルルームの平面図だ。我ながら細かいとこまでよく書いたものだ。
実はこのイラスト、ゼロから私が考えたのではない。妹尾河童が「河童が覗いたヨーロッパ」で旅先のホテルをスケッチしていたのを見て、真似をしてみたのだ。当時は結構出張があったので、題材に不自由することはなかった。
河童さんは本の中で
僕はプロだから入口に立っただけで部屋のイラストがすらすらと描けるんだ
と記していたと思う。
一応一級建築士を持っているそれなりにプロの私が思うには、
それは嘘だ
と疑っている。何故なら入口から見た透視図は確かにすぐ描けると思うが、部屋の平面図は縦横の寸法、家具との位置、大きさの関係が正確にわからないと描けないはずなのだ。
彼の描いた平面イラストは寸法関係がかなり正確で破綻がない。著作権があるのでここにその絵を載せられないが、興味のある人は是非見てほしい。
どうやってこんなイラストを描くのだろう
一番確かな方法は、片っ端から物のサイズを測り計算しやすい100分の1スケールでノートに書いていくことだ。シングルなら例えば奥行きは6cm、幅は3cm、ツインなら幅は4cm、奥行き8cmと書いていく。
椅子は4mm×4mm、デスクの奥行きは4.5mm、シングルベッドは1cm×2cm、ダブルベッドは⒈4cm×2cmなどなど。
でも私のイラスト見ていただければわかるだろうが、通常のA4サイズのクロッキー帳では1/100サイズでは小さすぎて細かな情報が書き込めない。そして小さな家具や備品までいちいち測っていては、夜が明けてしまう。
ではどうするか。
特別に私の方法を教えよう
まず部屋の入口から窓まで、部屋の奥行き寸法をスケールで正確にはかる。次の窓のある壁の幅を図る。これで部屋の全体の大きさは決定だ。
通常シングルルームなら奥行きは6メートル以内、幅は3メートル以内だろう。私のクロッキー帳はA4サイズなので1/30スケールで描くとちょうどよい。
つまり部屋の幅は大体10cm、奥行きは奥行きは20cm以内に収まるはず。まずは部屋の全体の姿をクロッキー帳に書きこんでしまうのだ。めんどくさそうに思えるが1cmが30cmと考えればほぼ想像がつくだろう。
大切なことはこれ以上細かな寸法を測らないこと
次は描こうとするポイントが全体の何分の一に当たるのかを目分量で決め、割り付けていくのだ。例えばベッド幅は部屋の2/3くらいでデスクの長さはさらにその半分とか。
もっとも建築家としての訓練を積むとインテリアの常識的な寸法は大体頭に入っている。例えば浴槽の長さは1.5mつまり画帳では5cmになることが直感的にわかってしまうのだ。
残念なながらここは素人より私たちプロの方がはるかに早く描ける。そして最後に洗面台等に対して適切な大きさの備品類を描きこめば完成だ。
今改めてこのイラストをよく見ると、TVに「TVゲームがついていた」なんていうコメントが書き込んである。自分のコメントほどある意味正確な情報は無い。是非私のやり方を試してほしい。
ものを見るときに自分の感じたものをシンプルに表現する
実はこれがイラストのコツなのだと思っている。
P.S.
このブログには本文中以外にも下記のような関連記事を書いている。興味ある方は参照してほしい。
■カテゴリ「絵画上達法→」
■加藤美稲作品集「街角スケッチ→」
■「クロッキー帳に何を描く?→」
■「誰にでもできるデッサン練習方法とは→」
[…] つまり、朝起きてから仕事にゆき、眠るまでの空間をアトリエにすれば良い。日常生活の中で気になったシーンをすぐ記すクセをつけるのだ。 仕事をサボれといっているわけではない。当然、あるページには仕事のメモがある。しかしそれ以外のページには、あなたの日常があふれているようにするのだ。 上のクロッキー帳はすべて私の過去の日常の一ページだ。ビジネスの記録はさすがにここに出せないが、それ以外のシーンをちょっと取り出していみた。参考になると思う。 ①図は若いころ、友人に子供が生まれ、遊びに行ったときにその子供をスケッチしたものだ。この子も今は結婚して子供がいる。(詳細記事はこちら→)②図は神戸ジャズフェスティバルに出かけた時のスケッチだ。ベースを弾く演者がかっこよかったな。(詳細記事はこちら→)③図は若いころ、設計のコンペに自主応募しようかと帰りの電車内でスケッチしていたものだ。結局仕事が忙しくてコンペには出せなかったが。(詳細記事はこちら→)④図は仕事が終わって、絵の好きな仲間が集まるクロッキー会に出かけた時のもの。仕事に大きなクロッキー帳をもって出かけるのは気が引けるが、会社のノートがこのクロッキー帳なのだから、便利なことこの上ない。⑤図はプライベートで旅行に行ったときの宿泊したホテルの部屋をスケッチしたもの。当時ホテルを設計していたということと、河童さんのイラストがいいなと思い結構まねて練習していたのだ。(詳細記事はこちら→)⑥図は仕事が終わったあと、建築主の接待に付き合って出かけた銀座のクラブの歌手のクロッキー。バブルのころの思い出だ。⑦図は帰りの電車で正面に座って眠っていた男性のスケッチ。「終電車の風景」だ。⑧図は上海に出張したときのスケッチ。すべての仕事を終え、帰りの飛行機に乗る前の空き時間を利用して焦って描いたものだ。(詳細はこちら→) […]