ユーロスターを楽しむ
フィレンツェからユーロスター(高速鉄道、日本の新幹線に相当)に乗りヴェネツィアへ。
せっかくの海外旅行。昼間は観光に動き回って移動は夕方から夜にというのが旅の定石。だがイタリアでは真昼の移動も悪くない。
何故なら車窓からはいかにも陽気な、イタリアらしい緑色に輝く田園風景を楽しめるからだ。
旅の達人なら、押し寄せる眠気を気にせず、そのまま幸せな白昼夢を楽しむに違いない。
だが私は初めてヨーロッパを訪れた初心者だ。 車内アナウンス が駅名を告げるたびに、乗り過ごしはしないかとびくびくし、緊張するうちに目的地になんとか到着した。
ヴェネツイア到着!
この日予約したホテルは、ヴェネツィア本島ではなく、手前の駅メストレ。旅行会社の選定したホテルだが、料金も安く、島まではわずか10分ほどで行けるのでお得感はある。
さてチェックインを済ませ、再び列車に乗り、海を渡りサンタルチア駅に到着したのは午後3時過ぎだった。
陽が落ちるまでの時間を気にしつつ、地図を片手にまずはサン・ジェレミア教会の広場へ。
太陽は西に傾いているとは言え、猛烈な熱波はひるむことを知らない。たまらず長く伸びた建物の影に避難し、スケッチブックを取り出す。
すっかり癖になってしまった、CAFEでビールを飲みながら絵を描くという至福の時だ。
「水の都」ヴェネツィア…つまり町の主役は運河と船だ。
だから建物も運河に沿って作られ、その隙間が街路になり、それが出会うところが広場と教会になる。そんなこの町の成り立ちを思い知る。
夕暮れを気にして再び歩き始めたものの、道は細くて、曲がりくねって、どこへ行くのかさっぱりわからない。歩けば歩くほど、方向感覚が無くなって、地図などさっぱり役に立たない。
おまけにフィレンツェの芸術家たちはあれほど親切だったのに、ベニスの商人は道を聞いても、ろくに答えてくれない。
さらにイタリアに来てから、毎日ハードスケジュールが続いたせいか私の足も悲鳴をあげている。
そんな疲れた体に鞭打って、この日最後にスケッチしたのがこのシーンだ。ゴンドラで行く運河の突き当たりに建物が面している。絵になる風景も主役はやっぱり運河だった。
もちろんこのシーンは水彩画として仕上げている。私のように古い町並みをテーマに絵を描いていると、どうしても、海や川、湖など水の表現が乏しくなる。その意味でもヴェネツィアは「町」と「水」両方を一枚に描ける貴重なモチーフなのだ。
イタリア最後の日!
そして翌日…最悪の一日になってしまった。
イタリアに来てから連日の猛暑と晴天。この国では雨など降らないのだと思い込んでいたが、なんとこの日は朝から大雨ならぬ大嵐。
しかしここまできて一日中ホテルで遊んでいるわけにいかない。傘の下から吹き込む横殴りの雨にずぶぬれになりながら、お目当てのサンマルコ寺院を目指す。だがさすがの私も心は少々萎えていた。
「寒い」・・・濡れた服に吹き付ける冷たい風が容赦なく体温を奪う。
「遠い」・・・またしても迷路。気がついたら同じところを2度歩いていたことも。
「疲れた」・・・ぐっしょりと水を吸った靴は鉛のよう。しかも足は連日の強行軍でまめだらけ。
三重苦に悩まされながらも何とかサンマルコ寺院に到着。そしたら・・・
なんと!
「外壁改修中!」
ご覧のように、建物正面から右側が工事用の仮設足場で覆われてまったく見えない。
いかに絵とは言え半分を想像で描くわけにはいかず、いつもは楽天的な私もさすがにがっかり。傘を片手に広場を出る。
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会
海辺に出て、疲れ果てぐったりとベンチに座る私を慰めてくれたのが対岸に見えた3つのドームと尖塔のある建物。
嵐の中、海に浮かぶその印象的な姿に思わず、寒さを忘れてスケッチしたが、後で調べるとその名は「サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会」。設計はかの有名なパラディオだった。
さすがに美しい。結局このスケッチがヴェネツィア最後の水彩画となった。「水の都」を存分にスケッチするつもりだったが、天気には勝てなかった。残念!
P.S.
海外旅行に食べ物の話は欠かせない。
本当は美味しい、お勧めのレストランやCAFÉの情報を皆さんに提供できると良かったのだが、残念ながらスケッチで疲れ果て、目の前にあったレストランで適当に空腹を満たすという毎日。
最初は美味しかったパスタも最後はトマトソースを見ただけでうんざり。帰りのエミレーツ航空の機内食の牛丼が最高に美味しかったことをせめてお伝えしておこう。
P.P.S.
■初めてのイタリア。ヴェネツィアに来る前に歩いたローマとフィレンツェのスケッチ旅については以下のような記事を書いている。興味のある方は参照してほしい。
■その他関連カテゴリの記事は以下の通り。
- 「スケッチの旅海外編→」
- 私の描いた水彩画はこのブログの「加藤美稲水彩画作品集→」にある。是非見て欲しい。
■水彩画の基本テクニックについて
[…] なんて美しい!この光景を目に焼付け、昼一番の列車でベニスへ向かう「イタリアをスケッチする ヴェネツィア編→」を参照)。 […]