ドイツで古城の絵を描こうと思えば「ロマンチック街道」は外せない。
ヴュルツブルクはその北の起点になる街だ。人口15万人ほどの中核都市でガイドブックの扱いも高い人気の町だ。
しかし実はこの町、空港のあるフランクフルトから列車で1時間とちょっとで行けてしまう。つまりここで宿泊するのは、スケッチ旅行のスケジュール上は賢いやり方でない。フランクフルトから日帰りとするか、他の都市への移動途中で立ち寄る方が時間的に無駄がないだろう。
私の場合は、ラインの古城を描いた後、ロマンチック街道と古城街道が出会う町、ローテンブルクへ向かう計画だったが、その途中でこの町に立ち寄ることとした。
時間はないけど、「1枚だけでもスケッチしたい!」
さてどうするか・・・今回は私の弾丸スケッチツアーの顛末を報告しよう。列車を降り、時計を見ると次の列車の出発まで残された時間は僅か3時間半。
あれこれ迷っている暇はないので、事前に調べておいた3箇所に狙いをつけ走り出す。
「マリエンカペレ(聖マリア礼拝堂)」
駅から一番近く、かつ一番期待していたの教会だ。ネットで調べるとで15世紀に建てられたゴシック建築らしい。
しかし行ってみると、ちょっとイメージが違う。
と言うのは、本格的なゴシック建築は一般に正面入口上に2本のシンボリックな双塔が建つ。しかしこの教会には塔が1本しかない。
そして普通は身廊横にある側廊部分の屋根上に華麗なフライングバットレスが舞い、その下の垂直に立ち上がる何本ものピア(寄柱)の間に大きなステンドグラスが嵌め込まれる。
ところがこの教会にはそもそも側廊がなく、バットレスもない。柱はシンプルで、ピアなどない。ステンドグラスは柱の横の子壁の間に埋め込まれている。
ちょっと建築を学んだ者には「これがゴシック建築?」と首を傾げたくなる造りだ。(ロマネスクとゴシックの違いについては「ヨーロッパ風景画の基礎知識 ゴシックとロマネスクの違いを知っている?→」を参照)
とは言っても、マルクト広場に面し、ロケーションもいい。白い外壁を赤い柱で縁取った、教会としては、派手で奇抜な外観でかっこよい。水彩画にするにはもってこいだ。いつもなら迷わずスケッチブックを開いただろう。
だがあいにく私は昨日、ケルンの本格的ゴシック大聖堂を見たばかり。あの巨大で圧倒される教会建築を見た後では、どんな派手な教会も霞んでしまう。
残念ながら全く、未練なく、あっさりとスケッチをパスしてしまった。
世界遺産「レジデンツ」
次に向かったのがバロック式の宮殿、「レジデンツ」だ。ガイドブックには豪華な階段室が有名で「内部見学の時間をじっくり取りたい」とある。
だが残された時間が少ない私には余りに巨大すぎる。本格的に内部を見学し始めると、スケッチする時間がなくなることはもちろん、列車に乗り遅れること間違いなしだ。
しかも外観はご覧のように建物の両翼がとんでもなく長く、私好みの構図を決めるにはこれまた時間がかかりそうだ。故に残念ながらこちらもパスだ。
「マリエンベルク要塞」
というわけで最後に残る候補はこの中世の建物。
マイン川にかかるアルテマイン橋との構図がいい。画面に水があると水彩画の良さが引き出せる。もはや迷っている時間はない。
画帳を開き、中世の気分に浸ってペンを走らせる。いつもながら私にとって幸せなひと時だ。
一気に描き終えた。
駅に大急ぎで戻り、コインロッカーからスーツケースを引っ張り出して、列車に飛び乗る。
間一髪!実はこんな芸当ができたのは、駅の大型コインロッカーが充実していたおかげだ。重いスーツケースを引きずっていてはとても今日のような芸当は出来なかった。
この町はどうやら私と同じ、途中下車客が多いらしい・・・とは、考えすぎだろうか。
P.S.
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