オーロラを描く?
私の水彩画制作方針は、トップページ「美緑(みりょく)空間へようこそ!→」に書いた通り、人の生命感や生活が感じられるものと決めている。だからあまり秘境や絶景の場所に旅することはない。
だがこの時は妻がどうしてもオーロラを見たいというので、旅先にフィンランドのロバニエミを選んだ。時期は9月30日から10月2日までの3日間。
オーロラは北緯65度~80度のエリア、オーロラベルトと呼ばれる場所でしか見られない。
実は必ず見たいならカナダのイエローナイフがベストだという。3日滞在すれば95%の確率で見られるらしい。だがカナダでは周りには何もない。雪だけだ。
自然派の人はいいだろうが、私のような寒さが苦手な絵描きにとってはとても苦痛だ。その点このロバニエミは気候は温暖、昼間はちゃんと都会で活動できるし、見るべき北欧建築もある。
カナダのイエローナイフに比べれば確率こそ落ちるが、 10月初旬なら80%以上の確率はあるという。 建築デザインに興味あるものにとってこちらを選ぶのは当然だろう。
オーロラを追って
さて初日、事前にインターネットで予約しておいたオーロラ探検車がホテルまで迎えに来てくれたものの、小雨がぱらつくあいにくの天気。心のうちでは見られるはずはないと、諦めていたものの、一応車に乗り込む。同乗者は私と妻の他に2組。計6人で全員日本人だった。
結局途中でソーセージバーベキューで休憩した時間を含んで3時間ほど移動したが、とうとうオーロラは現れなかった。
翌日も昼間から曇り。今日もダメかと諦めかけていたが、何故か妻は強気。
「絶対に見える!」と言い張る。
夜が来て、昨晩と同じメンバーで出発。オーロラを求めて1時間ほど走っただろうか、アメリカ人運転手の指示で湖の辺りで下車、指差す方向を見る。
「見えた!」
水面の上に青白い光が。そのすぐ横に月が輝いている。絶景だ。
オーロラはじっとしていない。動きを追い、一番眩く輝いた瞬間、シャッターを押す。それまでオートモードでしか使っていなかった私のミラーレス一眼レフが初めて、マニュアル操作でその威力を発揮した瞬間でもあった。
もちろん妻は大満足、私も闇夜に青白く輝く浮かび上がる不思議な現象に息を呑んだ。
だが残念ながら絵描きとしては、やはり絵にする気になれない。先に述べたような「人の気配」が感じられないからだ。それに下に塗った色に淡い色合いを重ねる透明水彩のテクニックは闇夜に浮かぶ青白い光を表現するのはいささか不都合に思えたからだ。
オーロラをデジタル作品に!
というわけで、ロバニエミで見たオーロラの感動は、水彩画にすることなく、私のカメラに収まったままになっていた。
しかし、それは3度目の個展の直前だった。ヌードクロッキーをパソコンを使って作品にする試みをしていた私は、突然閃いたのだ。
オーロラそのものは絵にしにくいけれど、作品の背景に拝借するならよかろうと。
しかも夜空に輝くオーロラの処理は淡い水彩画よりも圧倒的にデジタルアートに向いている。基の作品は私のクロッキーをスキャナーで読み込み、面白い構図になるよう、組み合わせた物だ。
それにレイアーを変えてオーロラの写真を読み込んだものを重ねると・・・・
出来上がりだ!
もっとも描画ソフトに不慣れな人が単に二つのレイアーを重ねてもこの作品のようにはならない。水彩画を描くのとは別なテクニックが必要だ。
それにこの作品の大きさはA1サイズ。実はこの個展作品の中では最大だ。そしてクロッキーのサイズは実物サイズよりも大きい。デジタルの良さは拡大に耐えられることでもあるのだ。
かと言ってここでそれらについて書き始めると、とんでもなく長くなるので残念だが、パソコンによる作品作りについては別な紙面で説明することにする。いずれデジタルアートの記事を書くつもりなので、その時をお楽しみに。
P.S.
パソコンで絵を描くための基礎知識は「パソコンで描く水彩風イラスト 初級編 ハワイの海辺」を参考にしてほしい。
このブログの関連記事は以下の通り。興味のある人は参考にしてほしい。
P.P.S.
今回のテーマはデジタルアート。だがこのブログの本来のテーマは「水彩画」である。そちらが目的の方は以下のリンクを参照してほしい。私の最新作の紹介も兼ねている。
- 「絵画上達法→」…私の水彩画テクニック全般をまとめてある。
- 「水彩技法ネガティブペインティングの使い方→」
- 「小さな水彩画」の楽しみ方とは?→
- 「逆光の風景を水彩でどう描くか?…杵築の武家屋敷→」
- 「効果的な水彩グリザイユ画法の使い方→」
[…] オーロラを見るためにフィンランドのロヴァニエミを訪れたことは以前に書いたとおり。(詳細はこちら→) しかし、しかし実はこの町は優れたデザインの現代建築がいくつもある「建築の町」としても有名だ。時に巨匠「アルヴァー・アールト」の設計した建物がいくつかある。 […]