ハワイ王朝の建築とは?
このブログでハワイの記事を二つ書いている。
ホノルルのハレクラニホテル(パソコンで描く水彩風イラスト 初級編 ハワイの海辺→」を参照)とカウアイ島の風景(「南の島の日常を描く ハワイ カウアイ島→」を参照)をスケッチしたものだ。
両方ともハワイらしい南国の日常をペンでスケッチしたもの、あるいはそれをパソコンで色つけしたものが主体だった。
「異国の日常」をスケッチすることはもちろんこの「美緑空間」の目的でもあり、私にとっても貴重な体験であり絵を描く基礎訓練にもなるのだが、できれば、せっかくハワイに来たのだから、この国らしい、エキゾチックな建物のある風景を水彩画で描きたいと思っていた。
実はハワイにもそんな私の希望を叶えてくれる歴史的建造物がある。
それが冒頭のスケッチ、「イオラニ宮殿」だ。そして民主主義の国アメリカ合衆国に存在する唯一の王宮でもある。
ハワイは有史以前から人が住んでいて、先祖はポリネシア人だという。統一したのが有名なカメハメハ大王だ。このイオラニ宮殿の入り口にも王の彫像がある。
ハワイの王宮というからには、ハワイの先住民、あるいはその王国の文化が反映された、さぞかし民族的趣味が反映された建物だと思うだろう。
だが冒頭の私のスケッチを見ればわかるように、意外に違和感のない西欧風デザインだった。
インターネットで調べてみると、竣工は1882年。建築家はどうやらアメリカ人のようだ。
鹿鳴館に似ている!?
面白い事実を発見した。
その時日本は明治15年。この頃、イギリス人建築家ジョサイア・コンドルの設計した有名な「鹿鳴館(上の写真)」ができていた。
その姿は今は見られない。だが当時の写真を見ると、イオラニ宮殿とそっくりなのだ。
つまり、このイオラニ宮殿も鹿鳴館も民族の文化より西欧化を急いだ時代のシンボルだったのだ。
日本はその後、近代化に成功し、現在に至っているが、残念ながらハワイ王国はこの宮殿が出来てから10年後に滅びてしまい、アメリカ合衆国に吸収されてしまった。
またハワイの先住民自身も西欧人が持ち込んだ伝染病により、人口が激減したという。
そんな歴史を背景にこの建物は今ホノルルに建っている。
予約をすれば豪華な宮殿内部インテリアも見学できるらしいが、私が訪れたときはそんな企画はなかったように思う。
淡彩スケッチ解説
私の時間は限られていた。だからほとんど悩むことなく、「ここ!」と構図を決め、「南の王国」の風景をペンでスケッチした。
幸い水彩紙(ラングトン)を持ち歩くようになった頃だった。おかげでスケッチだけで終わることなく、帰国してから透明水彩で仕上げることができた。
この絵の制作プロセスは、「ペンと水彩で描く風景画の魅力とは→」に記した淡彩画の基本通りだ。
ペンの線を生かすように、透明色であるプルシャンブルーでグリザイユを施した後、固有色を重ねている。
ただ、今回は常夏のハワイでのスケッチ。暑さを避けるため、私がスケッチブックを広げたのは当然だが、緑豊かな木陰の中。
だから宮殿の風景を切り取る周囲の樹木は逆光になるので、どうしても暗くなる。これを奥の風景と同じブルーでグラデーションを施すと手前の木々が真っ青になってしまい、そのあとの固有色(サップグリーンなどの透明色)が美しく見えない。
だから手前の木々の暗部はわざと不透明度の高いオリーブグリーンを主体とし、さらに赤みのあるウィンザーバイオレットを加えて明度を落としている。
このグリザイユ画法と絵具の透明度の関係については少し勉強が必要だ。以下に詳しい記事を書いているので参考にしてほしい。
「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵具の透明度→」
P.S.
その他、このブログの関連記事を以下に記しておく。興味ある方は参考にしてほしい。
- 透明水彩絵具の基礎技法については「水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!→」を参照。
- ペンで建物を描く秘訣は「鉛筆はいらない!下書きしない風景画の描き方→」を参照。
- カテゴリ「スケッチの旅海外編→」
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