ネガティブペインティングとは何か?
ちょっとウィキペディアを調べてみよう。
“Negative painting is done by painting the background of a design dark, allowing the lighter color to appear as the design.”とある。
簡単に言えば「背景を暗くして明るい部分をデザインとして生かすこと」である。
元来は陶器の制作で用いられた技法のようであるが、水彩画においても極めて重要なテクニックである。今回は私の人物画の背景で使用した制作例で解説しよう。
ネガティブペインティングを施す前の状態
私の作品「白花を想う」のファーストウォッシュ、セカンドウォッシュ完了後の状態である。
「真夏の草原に横たわる婦人を少し幻想的に描いたもので、タイトルの「白花」が大事な要素であることは言うまでもない。
さて水彩画の描き方は人により様々ではあるが、ファーストウォッシュで全体の色調を塗り、セカンドウォッシュで大まかな明暗と立体感を描くという流れはどの水彩画家も変わらないだろうと思う。
従ってこの状態では全体を覆う青緑の色調と背景の森、手前の草むら、中央の人物の大まかな距離感などを表現し終わったということになる。
ネガティブペインティング完了後の状態
問題はここからだ。次の仕上げステップでは何をするかわかるだろうか?
きわめてシンプルに言えば立体感、存在感をさらに強調することである。だがその方法は二つある。
- 明るい部分に中間色、または暗色の立体を描き込むこと。
- 明色、中間色の部分に暗色の背景を塗り立体を浮かびあがらせること。
①の方法は遠景から中景の森の表現に使用している。明るい空気の中に暗い枝や木の葉が浮かぶ様がわかるだろう。
②の方法が今回のテーマである「ネガティブペインティング」である。具体的に説明しておこう。
実はこの絵は下書き段階で鉛筆によるハッチングで明暗を施してある。従って上図のようにファーストウォッシュ、セカンドウォッシュである程度ラフに透明水彩を重ねても、草の形がかなりはっきり見えている。
一番明るい部分は「白花」(スズランをイメージしている)。次に夏の光を反射する細い草、そして人物である。つまりそれら以外の背景を思い切って暗くするのである。
このブログの熟読者はすでにご存じだろうが、油絵と違って、水彩画では「白」は水彩紙の表面を塗り残すことにより表現する。従って「白花」は白絵具を最後に塗るのではなく、最後に「白花」の周囲の背景を暗くすることにより表現する。
いわば「ネガティブペインティング」はこの絵に、もっともふさわしい技法なのである。
ただしこの水彩画の主役はあくまで「人物」。だから人物との境界は明瞭に表現するが、手前になるほど、あるいは人物から離れるほどその明暗の境界をぼかしてある。より幻想的な表現が出せると考えたからだ。
いかがだろう?
今回は私の人物画とその背景の制作プロセスで説明したが、静物画などでもよく用いられる。暗いバックに浮かび上がる花びらの表現などには最適だろう。あなたも是非チャレンジしてみてほしい。
P.S.
「ファーストウォッシュ」「セカンドウォッシュ」などの水彩用語がわからないという人は、下記カテゴリに水彩画の技法に関する記事をまとめているので順番に読んでみてほしい。
- 「絵画上達法→」
- 「ためになる美術講座→」
特に初心者のためには以下の記事が役に立つだろう。一読してほしい。 - 「水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!→」
- 「水彩画入門!始めに買うべき道具は?→」
私の人物画の制作プロセスに今日もにある人は以下の記事を参照してほしい。
私の作品を見るには
P.P.S.
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