いにしえの都 平城京の風景を描く

私の水彩画に奈良がほとんどない!?

 あなたは日本にある世界遺産といえば何を思い浮かべるだろうか?多分まず京都、奈良を思い浮かべるのではなかろうか?

 しかし、実は奈良は(大仏様周辺以外は)観光地としては京都ほどメジャーではない。その証拠に、例えばその昔JR西日本のヒットしたキャンペーン「三都物語」の三都とは京都、大阪、神戸で、奈良は入っていないのだ。
 その最大の原因は奈良は交通の便も悪いし、宿泊施設も貧弱だからだ。

 トップページ美緑(みりょく)空間へようこそ!→に掲げたように、私の大切な活動の一つが「古き良き日本の風景を描く」ことであるにもかかわらず、私が奈良の風景を描く頻度が少なかったのはそんな事情があったからだ。

奈良の町並みをチェックすると…

 しかし、2009年神戸から直行で奈良に行ける列車(阪神奈良線)が開通した。神戸人の私にとっては、かつてはJRと近鉄を乗り継ぎ、大回りでいかねばならなかったことを考えると、心理的距離はずいぶん近くなった。

 そこで今までの遅れを取り戻そうと、改めて奈良のスケッチ候補を調べてみた。すると意外なことに私がスケッチ先としてよく選ぶ「重要伝統的建造物群保存地区」は実は奈良の中心部には一つも無いということががわかった。

 「まさか!」と思うかもしれない。だが東大寺、興福寺などは単体としては世界遺産であるが、歴史的な町並みとしては評価されていないのだ。

 確かに現地を訪れたことがある人にはわかると思うが周囲は中途半端に開発されていて、立ち食いの店やら変な土産物屋がひしめいている。私が水彩画にしなかった訳はここにもあるようだ。

奈良の世界遺産とは

 さて改めて奈良の世界遺産を調べてみると正確には以下の3つがある。
①「法隆寺地域の仏教建造物」
②「紀伊山地の霊場と参詣道」
③「古都奈良の文化財」
 法隆寺と法起寺が①、熊野古道が②である。そして③にはさらに以下の8つの文化遺産が含まれる。東大寺や興福寺(「世界遺産興福寺と東大寺を描く→」を参照)、春日大社、春日山原始林、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城京跡である。

 私の個人的な経験で申し訳ないが最初の東大寺、興福寺、春日大社は小学校の修学旅行で、残りも大半は大学時代に訪れたことがあった。おそらく旅行会社がお薦めする有名観光地であり、行くべき価値ある順番だったのだと思う。

平城京を描く

 そうして世界遺産の中で唯一行ったことがなかったのが「平城京跡」だった。しかし新しい列車の開通は私が古都奈良の8つめの世界遺産を目にするきっかけになったというわけだ。

 冒頭の写真にあるように、私が訪れたのは「秋」。見渡す限りの草原だ。正直言うとこれが世界「文化」遺産かと思った。本来なら、古都の人の往来をイメージする風景を描きたかった。

 だが今でも人が住む京都、平安京とは違い、あまりにこの平城京は古すぎた。人の気配は無く、あるのは広大な発掘跡。文化の香りというよりは廃墟の虚しさが漂う。

 私が訪れた時、驚いたことに外人の剣士が剣道の型の稽古をしていた。実は私も剣道3段。ある程度のことは知っている。かなりの腕と見た。歴史遺産を背景に剣道とは。なんて魅力的な光景だろう。

 とは言っても、私の描きたいものは単なる草原や剣道家の演武ではない。平城京ならではの風景を描きたい。
 ポイントはやはり一面に広がる薄(すすき)野と平城京の建物だろう。

 幸い平城京跡には、いずれも現代の復元ではあるが奈良時代の様式の建物が、3つある。「朱雀門」「東院庭園」「大極殿」だ。

 このうち大極殿は上の写真を見てもわかるように、高さ27メートル、幅44メートルもある巨大な建築物だ。絵にするに不足は無い。

大極殿

 私がこれだ!と想った構図は、すすき野の広がる広大な空間に大極殿が建つ。空には流れる雲。
「古(いにしえ)を偲ぶ」この構図で私が描いた水彩画のタイトルである。原画は私の個展で!

P.S.
 このブログでは文中でリンクを張った他にも以下のような関連記事を書いている。興味のある方は参照してほしい。

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■スケッチ旅と風景画の描き方について


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2件のコメント

[…]  この内、先に紹介した「平城京跡」(詳細はこちら→)にあるのは、同じ奈良の世界遺産でも、もはや人の住んでいない、言わば「廃墟の美」とでもいうもの。  それに対して、今回訪ねる興福寺と東大寺は今でも多くの参拝者が訪れる、現役の歴史文化遺産であり、私がブログのトップページに書いている「古き良き日本の風景を描く」のにふさわしい題材である。 […]

[…] P.S.山辺の道は世界遺産を目指していると書いたが、奈良にはすでに3か所の世界遺産が登録されている。そのうち「法隆寺地域の仏教建造物(詳細はこちら→)」と「古都奈良の文化財(詳細はこちら→)」については別に記事を書いている。興味あるひとは覗いてほしい。 […]

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