世界遺産の宝庫、スペイン。最初に訪れた首都マドリード(「スペインをスケッチする マドリード編→」を参照)は残念ながら、描きたいと思う風景はあまりなかった。だが次の町グラナダは期待に違わぬ魅力的な町だった
グラナダの歩き方は?
スケッチどころをご紹介しよう。まずグラナダの町を俯瞰する。それほど大きな町ではない。見どころはだいたい3km四方に収まる。
だからスケッチブックを持っての移動も全て徒歩だ。マドリードから来る列車が到着するグラナダ駅は町の北西端にあり、有名なアルハンブラ宮殿は南東端にある。ホテルが密集する町の中心はその中間にあると考えればいいだろう。
さて私がグラナダに到着したのは午後。今からアルハンブラ宮殿に行っても、内部を見学するだけで終わってしまい、スケッチする時間は取れないと考え、その日はアルハンブラ宮殿の全景を見られるという丘の上にあるサン・ニコラス広場へ向かった。
アルバイシンとは
地図で見る限りは、チェックインしたホテルから直線距離で1kmほど。だがこのあたりはアルバイシンと呼ばれる、住宅が入り組んだ地区で、道は曲りくねり、地図など全く役に立たない。時間に余裕を持って出かけよう。
廻りの建物は赤瓦の屋根、白い外壁で統一され、石畳とのコントラストが美しい。そして高低差のある道と建物が切り取る青い空はアルバイシンの美しさそのものだ。水彩画にぴったりの雰囲気である。
時間があればこの空をゆっくりスケッチしたいところだ。ちなみにこのアルバイシンもアルハンブラ宮殿と並んで世界遺産に選定されている。
さて結局ホテルから1時間ほど歩いてサン・ニコラス広場にたどり着いた。
これがアルハンブラ宮殿か・・・素晴らしい!
目の前に広がる風景に、二の句が告げられないとはまさにこのことだ。早速スケッチしようと思ったが、この素晴らしい眺望をカメラに収めようとする観光客がひしめき合い、画帳を開くスペースなど全くない。
この日は平日。おそらくいつ訪れてもこの状態なのだろう。さてどうするか。実はいい場所があったのだ。
この周辺のレストランは全て「アルハンブラ」ビュー。窓際の席を確保して、ワインを飲みながらゆっくりスケッチすれば良い。絵描きにとって至福の時だ。
グラナダでは2泊した。しかし初日は午後の時間をアルバイシンに当てたので、お目当てののアルハンブラ宮殿内部を描く時間は翌日、チェックアウトしてから夕刻の列車に乗るまでの数時間しかない。しかも聞けば、宮殿の入場券を得るためには長時間並ぶ必要があるらしい。
というわけで、日が昇るとすぐにホテルを出発したが、それでもチケット売り場に到着したらすでに長蛇の列だった。
しかも宮殿内部の見学時間に入場時間の指定があり、思いつくままぶらつくわけにもいかない。覚悟はしていても、スケッチ旅行者には実に迷惑なシステムだ。
さていよいよ入城だ。アルハンブラの内部をスケッチしよう
まず足元のペイブメントに驚かされらる。まだ宮殿に入る前の外部の床にでさえこのように濃密なデザインが施されている。驚きだ。
そして宮殿の内部。・・・素晴らしい。王妃の間、有名なアラヤネスのパティオ。だがどこも観光客が多く、立ち止まって絵を描くのは迷惑になりそうだ。
ライオンの中庭に来た
どういうわけか部屋の角に休憩用の椅子が置いてある。誰も座っていない。しめた。というわけでここで一枚スケッチすることができた。
ただし・・・上の写真を見てほしい。ご覧のように床、壁、天井、柱…すべてが装飾で埋め尽くされている。水彩画として最後まで仕上げるには相当に勇気がいることを忠告しておく。
宮殿の外にも魅力的な風景が
宮殿をじっくり堪能した後は、アルカサバへ。こちらは宮殿の要塞機能部分だ。人もあまりいないのでスケッチには最適だ。
アルハンブラ宮殿は実は大きく二つのブロックに分かれている。一つは先に述べた宮殿と要塞部分。そしてもう一つ、谷を隔てた反対側にヘネラリフェと呼ばれる別荘ゾーンがあるのだ。
そして実はこの別荘から宮殿を見ると、宮殿の裏側とグラナダの町が一望できるのだ。宮殿と町の美しさ両方を描くことができる、最高のポイントだ。
でもしょせんアルハンブラの「裏側」でしょう?と言って侮ってはいけない。本当に美しい建築はどこから見ても美しいのだ。
ちなみに私は上の構図をスケッチした。写真では手すりが気になるが、水彩画にする時にはいうまでもなく、邪魔の物はすべて省いてしまえばよいのだ。
グラナダの大聖堂
この町で忘れてならないもう一つのスケッチポイントは グラナダ大聖堂だ。
ガイドブックの上空から撮影した写真を見ると、いくつもの尖塔とドームが美しい建築のはずだが、残念なことにこの建物には正面の広場もなく住宅が密集する町のど真ん中に建っている。
地図で見る限り相当に大きいのだが全貌は見えず、周囲を歩き回ると、道の片隅から、ところどころ美しさの片鱗だけを見せてくれる(上の写真)。
でも私は発見した。聖堂が唯一、小さな広場から椰子の木とともに並んで見えるのだ。スペインならではの教会風景だ。大急ぎでスケッチしたのは言うまでもない。
さあ、出かけよう。
まもなくセビリア(「スペインをスケッチする セビリアとコルドバ→」を参照)行きの列車が発車する!
P.S.
このブログには以下のような関連記事がある。興味のある方は参考にしてほしい。
■カテゴリとしては
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■スケッチ旅のノウハウは
■水彩による風景画の描き方は
[…] イスラム寺院。マスジッド・アブドゥル・ガフール寺院。確かにイスラミックなアーチが特徴だが建物は黄色と緑でカラフルに彩られている。私が見たイスラム寺院、スペインのアルハンブラ宮殿(詳細はこちら→)やコルドバのメスキータ(詳細はこちら→)などはこんなに派手ではなかった。シンガポール仕様なのだろうか。 スケジュールの都合で行けなかったが、セント・アンドリュース教会をはじめとするキリスト教の寺院もかなりあるようだ。 […]