まるでコロー?日本の有名水彩画

この絵は誰が描いた?

 上図の作品は誰が描いたかご存じだろうか?19世紀フランスのバルゾン派の絵画が好きな人なら「コロー!」と答えるのではなかろうか。

 だが正解は日本の有名画家「浅井忠」。①は「グレーの古橋」②は「河畔洋館」という作品でいずれも浅井忠がパリに留学した時に描いた水彩画だ。

浅井忠と水彩画

 学生時代は油絵一辺倒だった私が今、水彩画を一生懸命描いているのはこの浅井忠の描いた水彩画の存在が大きい。

 というのは、私の水彩画は全くの独学。だからやはりまずは水彩画の大家の絵を調べてみようと思ったのだ。

 インターネットで「水彩画」と検索すると「浅井忠は油絵だけでなく水彩画にも才能を発揮した」という一文に出会う。元々浅井忠は好きな画家だったこともあり、さっそくその作品を調べてみた。

 すると第一法規という会社が出版した「日本水彩画名作全集」という画集があり、その第一巻が「浅井忠」だということが分かった。
 今は絶版で入手できないとのことだったが、「amazon」で検索すると中古の画集が見つかった。さすがに大作家だけのことがある。

 その画集で見つけた絵が冒頭の2枚の絵である。
 独特の落ち着いたグレーの色調と柔らかな筆のタッチ・・・どこかで見たような・・・そう私が好きなコローの世界そのものなのだ。

 コローは油絵でグレーを表現(これは比較的容易だ)した。
 だが浅井忠は水彩でグレーの世界を表現している。水彩で美しい白、黒、グレーを表現することはとてもむつかしい(絵具の知識 透明水彩は何故美しい?を参照)。
 私はその秘密を知りたくて、未だに試行錯誤をしているといっていい。

 実は現代の水彩画家はどちらかというと、浅井忠と同じようにじみやぼかしの技法を駆使しながらも、もっと色が鮮やかだ。

 浅井忠は51歳で世を去ったという。
 もう少し長く生きていれば、コローのように柔らかく、落ち着いた雰囲気の中で、みずみずしく鮮やかな色彩を展開する、そんな画期的な風景画が見られたかもしれないと思うととても残念な気がする。

超絶技巧対ロマンチックな情景表現?

 なお、このブログで同じく明治の水彩画家五百城文哉(いおきぶんさい)(「知っておきたい有名水彩画!日光陽明門→」を参照)について書いている。

 五百城は1963年生まれ、浅井は1856年生まれ。7歳しか違わない。だが画風は五百城が超絶技巧を駆使した細密描画、浅井がロマンチックな情景表現と二人の表現は全く異なっている。

 互いの画風について、意見を交わした、あるいはライバル視したのではないかと考えて調べ始めたが、今のところそんな文献は発見できていない。

 もしそんな歴史的事実が発見出来たらまたこのブログで皆さんに報告したいと思う。どうやら明治の水彩画の潮流にはとても興味深いものがありそうだから。

P.S
このブログでは文中にリンクを貼った以外にも水彩画についての関連記事を書いている。興味のある人は参照してほしい。

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