京都は寺も良いが自然も良い
5月の新緑の頃、京都の自然を描こうと嵐山・嵯峨野に出かけた。
交通機関は3駅ある。JR「嵯峨嵐山」、京福「嵐山」、阪急「嵐山」だ。私のように神戸から行こうと思うと、やはりJRが便利だ。始めは駅を降り南へ抜け、とりあえず桂川に向かう。
渡月橋はスケッチしない?
そして目にする「渡月橋」。 もちろん美しい。
しかし桂川にかかる渡月橋の構図は古来あまりにも有名。有名すぎるシーンは、構図を選ぶ手間を省いているようで、絵描きとしては逆に抵抗がある。
竹林の道と大河内山荘
というわけで、今度はちょっと方向違い、 嵯峨嵐山 駅の西側、山陰本線の北側にある大河内山荘へ向かう。途中にある「竹林の道」もこれまた有名だ。時間があればここもゆっくりスケッチしたいものだ。
大河内山荘(上の写真)は水戸黄門役で有名な俳優大河内傳次郎が造った回遊式の庭園だ。
檜皮葺の建物もなかなか趣がある。普通の観光客ならばここでたっぷり時間を使うところだが、今回のテーマは「自然」。狙いは北側の公園だ。
保津川の面白さとは?
上の写真をみてほしい。公園の展望台から目にする「清流」と「新緑の山並み」だ。普通ならこれだけでも十分に美しい。
だがちょうどその時、むこうの山裾から「保津川下り」の船が現れた。そしてよく見ると山の中腹に形の良いお堂(「千光寺」というらしい)が見える。川の対岸の崖上にはこれまた人気のトロッコ列車の線路が走っている。
「清流」、「新緑の山並み」「保津川下り」「トロッコ列車」「千光寺」・・・千両役者が勢ぞろい。京都の風景を描くにはどうやら「自然」だけでは不足するようだ。思わずスケッチをしたのが冒頭の水彩画である。
作品解説と作画法
さてこの作品の解説を少ししておこう。
いつもの風景画のようにペンと水彩で描いているが(「ペンと水彩で描く風景画の魅力とは→」を参照)、今回は建物よりも「自然」を強調したかったので真っ黒なペンの線はいつもより控えめにしている。
遠くの山の稜線は軽く、ところどころわざと線を切って、空との境界を曖昧にしておいた。
着彩の要領は、始めにプルシャンブルーだけを水でよく溶き、山、木々の微妙な明暗を表現しておく。その後、サップグリーンの緑、セルリアンブルーの空、ローシェンナの木立や民家などの固有色を塗るグリザイユ画法(「水彩画にふさわしいグリザイユ画法とは?→」を参照)を使っている。
ただし5月の新緑は明るく、かつ濃い色なので、軽く固有色の緑色を塗り分けただけでは、ぼんやりとした色のままで、思うイメージにはならない。
ここでは明るい部分は初めのころの固有色のままだが、濃い部分は何度も塗り重ね同じ緑でも深みを出すようにしている。画面全体としてはちょうど良い空気感が出たと思っている。
P.S.
今回は京都スケッチ旅の紹介と私の水彩画の作成プロセスに触れた。このブログには以下のような関連記事がある。興味のある方は参考にしてほしい。
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