絵の上達具合を知る方法とは?

最近自分の描く水彩画が気に入らない・・・そんな経験はないだろうか?
気にする必要はない。その理由はあなたが上達したからだ。

本当?

今回は自分の上達具合を図る方法を紹介しよう。

目次
1.あなたはスランプ?
2.あなたの理想の絵は?
3.あなたの絵が気に入らない理由は?
4.この絵の問題点は何だろう。
5.どうすれば、いい絵になるのだろう?
6.まとめ

■あなたはスランプ?

 水彩画を描き始めた頃、まず道具を揃える楽しみがある。この水彩紙、透明水彩絵具、筆・・・良い道具さえ揃えればプロのような絵が描ける・・・などと夢想する。実際にペンや筆を動かすこと、色を塗ることそのものが楽しい。毎回のカルチャーセンター通いが待ち遠しい。

 だが残念ながら、人間はいつまでも同じ場所には留まっていられないらしい。カルチャーセンターの周りの人の絵が気になり出すだろう。

 子供の頃習った不透明水彩の延長ではなく、「透明水彩絵具」独特のテクニックや言葉を覚えてくると、他人がマスターしている技術が自分にはないことを知る。

 かくして「自分は才能がない・・・?」と絵を描くのが嫌になり始める。スランプだ。
その時、ちょうどあなたに大切な仕事が舞い込む。絵を描く時間なんてない。決定的な理由が見つかったので、絵を描くのをやめてしまう。

 こんな人がいるのではなかろうか?

 もったいない!。スランプなのは貴方が上達したからだ。飛躍的に実力を伸ばすチャンスなのだ。

■あなたの理想の絵は?

 思い出して欲しい。貴方が好きな絵を。多分絵を描き始めたのは、誰か好きな画家、あるいは作品があってそれに憧れたからだ。人物画?、静物画?、風景画?水彩画?、油絵?、日本画?ルノワール?、東山魁夷?・・・
まずもう一度自分の方向性を確認しよう。

■あなたの絵が気に入らない理由は?

 さて、貴方が描きたい絵を頭に入れ、今まで描いた貴方の絵をずらっと並べて眺めてみよう。
 おそらく、今手元に残している以上、どの絵も描き終えた直後はそれなりに満足していたはずだ。

 ところがスランプになった時に以前の絵を見ると、すぐに直したくなる絵が見つかるはずだ。

■この絵の問題点は何だろう。

 大切なのはここで論理的に考えることだ。その絵の問題点は何だろうと?

 けっして「何となく」で済ませてはいけない貴方の理想の絵を、描きたい絵をもう一度頭に入れてもらったのはそのためである。ここから先は人によって内容は違う。かと言って抽象的な話ばかりでは納得できないだろう。私の作品の実例、体験を元に説明しよう。

 冒頭の絵は私がイタリア、フィレンツェでペン描きスケッチし、帰国してから着彩した水彩画である。当初は初めてのイタリアスケッチ旅に興奮し、美しい海外の町並みを自分の手で描いたことだけに満足していた。

 この水彩画も実は第一回の個展に出品したものだ。それなりに評判は良かった。特にペンの線に対しての好意的な意見が多かったように思う。

 しかしその後、多くの名人の透明水彩を見ているうちに、どうも物足りなくなってきた。

 その原因を考えてみた。この風景をスケッチしたのは、巡礼者の行く道と先に輝く鐘塔の対比に感動したからだ。

 だがこの絵は、建物の石の色の違いは描き分けているが、ドラマチックなはずの画面の明暗はそれほど描かれていない。むしろ平坦な絵だ。暗い部分の微かなブルーで明暗が伝わるのみである。

■どうすれば、いい絵になるのだろう?

 まず明暗を再確認した。フィレンツェの路地は細く、両側の建物は道幅に対して相当高い。つまり、建物の足元は井戸の底の状態に近い。もっと陰を濃くしなければならない。

 透明水彩の場合陰を「濃く」するには二つ方法がある。絵具の水分を減らすか、混色して彩度を落とすかである。この絵では陰は主にプルシャンブルーおよびサップグリーンとセピアを混色している。

 見てもらえばわかるように、この状態でも青や緑が強い。さらに濃い色を塗ると石の材質感がなくなってしまうことは容易に想像がつくだろう。

 そこで今回は強く発色している緑、青の補色系としてウィンザーバイオレットを混色した陰を塗った。建物の足元の陰を濃くすると当然ながら窓の中はさらに暗くなる。この部分は外壁に重ねた陰色の水分を減らして塗っている。
 こうして完成したのが下図である。

■まとめ

 改めて2枚を比較してみる。下図を見てほしい。右図は左の2年後の作品である。

 淡い絵が好みの人はひょっとすると最初の絵、左図が好きかもしれない。だが少なくとも今回私が描きたかったのは右図の方だ。それを実感できたのは過去の絵を見直し、新しい技術で描き足したからだ。

 皆さんも、スランプの時こそ、昔の自分の絵を見直して欲しい。案外自分が「上達している」ことを知るきっかけになるかもしれない。

P.S.
 実は今、修正したはずの右の絵でも気にいらないと思っている。やはり人は進化し続けるようだ。ただし水彩画はご存知のように一旦暗くすると、2度と明るくならない。これ以上の修正は不可能なのだ。

 このブログでは水彩画のテクニックに関する記事を常に、更新追加している。水彩画を描く人は時々訪れてほしい。きっと参考になる記事があるはずだ。

 今回は「自分の絵の上達しているか?」をテーマにした。このブログには以下のような関連テーマの記事がある。興味のある方は参考にしてほしい。