海外スケッチの旅 5つの心得

 仕事に追われる日常を離れ、思い切って海外スケッチ旅に出かけよう。そんな人のために、私の経験から学んだ5つの心得をお伝えしよう。  

その1 安くても団体旅行で絵は描けない

 忙しい。旅行の計画なんてしていられない。この際旅行会社の格安ツアーで・・・決めたくなるが、ちょっと待って欲しい。
 旅先で気持ちよく絵を描いているところで、昼食、夕食の時間、移動の集合時間が来てしまったらどうする?スケッチブックを閉じて、集合場所へ一目散・・・では、きっといい絵は描けない。

 団体旅行は一般観光客向けに作られたスケジュール。メインは食事と土産と数多く名所を見ることだ。同じ場所に2時間もじっと座っていることなど考えくれてはいない。

 芸術家は気ままな生き物。旅行に行ったらあなたもきっとそうなる。ここで絵を描きたい、と思ったら納得いくまでその場を離れられないのだ。

 もちろん自分一人でも最低限の移動スケジュールは立てなければいけない。でも事前にこの都市で何枚、あの都市で何枚と大体の予定を立てておけば、それほどストレスは感じない。なにより一人で自由に好きなだけ時間を使えるのだ。

その2 絵を描くなら各都市最低2泊しよう

 自分でスケジュールを自由に組めるからと言って、パックツァーのように1日に2都市を回るようなハードスケジュールは厳禁だ。食べ歩きの旅ならともかくスケッチには最低限の段取りが必要。具体的に言えば、1都市に最低2泊はしたい。

 何故なら着いた当日が午後なら、ホテルで荷物を開け、とりあえず部屋を確認するだけで、大抵日暮れまで何時間も残っていない。初めて歩く街でいい景色を探してスケッチを完成させるのはとてもつらい。

 もし到着時間が夕方だったら、その日はスケッチできない。2泊する予定が組んであれば少なくとも翌日はまる一日スケッチに当てられる。せっかくスケッチ旅行に来たのに成果ゼロの都市があるのは寂しい。

 以前私がスペインにスケッチに行ったときは(「スケッチの旅スペイン編→」参照)7泊で5都市を回るスケジュールを立てたが、そのうち一日が一泊で2都市を回るスケジュールを立ててしまった。

 ただでさえ苦しいスケジュールなのに重いスーツケースを引きずり、英語の話せないスペイン人に道を聞きながら移動する苦労は半端ではない。
 列車の時間に気を使い、到着駅のアナウンスに神経を使い、疲れ果ててスケッチどころではなかった苦い思い出がある。

 そしてここだけは絶対にいい絵を描くぞと思った都市は3泊を当てよう。なぜなら私たちには「雨」という大敵がある。もし到着した翌日が雨だったら2泊してもスケッチ旅行は台無しだからだ。

 普通の観光客なら傘をさせばいいだけ。でも私たちは絵を描かなくてはいけない。傘などさしていては絵など描けないのだ。3泊ならば、過去の経験でさすがに、その翌日はじっくり描ける。

その3クレジットカードは3枚準備しよう

 まず現金を入れる財布とカードは別にしておくこと。そう「地球の歩き方」にもちゃんと書いてある。当たり前だ。でももしカードを失くしても、日本なら何とかなる。家族、友人、に救いを求められる。だが海外ひとり旅で現金とカード両方を一度に失くしたら、何もできない。下手をすると帰りの飛行機に乗る電車代も払えずに帰国さえできなくなる可能性もあるのだ。

 私の場合はウィーンで現金、カード全てを失くした。その時の苦難は「ウィーンで待っていた大失敗とは→」を参照してほしい。
 ここではその後の研究結果(?)も踏まえたベストな提案をお伝えする。まずクレジットカードを以下のように3枚必要だ。

  • 外貨に対応したデビッドカード。現地での財布代わりだ。
     これは店先ではクレジットカード処理されるが、実際は口座に入れておいた現金が即時決済される。つまりクレジット会社の両替手数料がかからないので経済的にも得なのだ。しかも行先の通貨(ユーロとかドル)を為替の安い時に買っておけばさらにお得だ。
     私はソニー銀行にユーロ口座を開き、為替レートを見て少しずつユーロを買っている。もし事前購入したユーロが不足する場合は円口座から当日の為替レートで引き落とされるので予想外に外貨を使ってしまった時にも安心だ。
  • 現金引き出しATM用クレジットカード。
     もちろんこれも一枚目のたいていのデビッドカードでもできるが、デビッドカードは現地ATMの使用料がかかる。
     クレジットカードによる引き出しはATM使用料無料というカードが多い。これは引き落とし時の為替レートで決済されるが、空港の両替窓口より確実に安い。
     私が調べた時点ではセディナカードが一番お得だった。
  • 予備のクレジットカード
     先の2枚があれば、もし一枚失くしても何とかなるわけだが、現金を引き落とす可能性があるときには1枚目と2枚目は外出時に両方持ち歩く必要がある。
     もし外出時にバッグの盗難などにあったら、両方取られてしまう可能性がある。だからホテルに置いておく予備のカードがもう一枚欲しいのだ。

その4 スケッチの道具に抜かりなく

 スケッチ旅に必要な基本的な道具については「スケッチ旅行に必要な道具とは→」をさんしょうしてほしい。ただし海外に出かけるときにはさらに細かな注意が必要だ。

  • スケッチ用バッグについて
    重いスーツケースはホテルに置き、あちこちスケッチに出かける時に必携だ。
    特にF6のスケッチブックが入り、筆やペン、スケッチ用の椅子、カメラ、雨具などを一つにまとめて入れられるものが良い。私は画材店に売っていたF6用のスケッチブックが入るリュックを使用している。
  • リュックについて
    後ろに背負ったリュックは海外ではすぐスリに狙われる。
    私はスペインで二度被害にあった。知らない間にリュックを開けられ、財布のなかの現金だけを取られた。人混みでは前に抱くなどの注意が必要だ。
  • 画材は予備について
    メインの画材、スケッチブック、ペンなどは必ず予備を持っていこう。
    現地で落とすと、愛用の道具と同じものは絶対に手に入らないと考えよう。私はスケッチブックは大きさを変えて合計3冊。ペンは同じ太さのものを2本ずつ2種類(合計4本)用意している。

その5 グーグルマップの設定と旅行用wifi

 短い時間で良い作品を多くスケッチするには効率よく現地を回る必要がある。私はかつては「地球の歩き方」を常にカバンに入れていたが、都市の主要地図にはレストランとショッピング情報ばかりで、絵描きが見たい、例えば古い教会の詳しい行き方などはとても扱いが軽い。

 だから最近は事前に行きたい場所をグーグルマップに事前に登録することにしている。拡大縮小が自由で道に迷うロスもなく、到着までの残り時間もわかるので、無駄がない。スケッチの旅には最高のツールだ。

 もっともそのためには旅行用の携帯wifiがいる。レンタル料金が一日あたり数百円するが、現地での便利さには代え難い。事前にインターネットで申し込んでおき、出発当日空港で受け取ると良い。

 さらに最近のデジカメはグーグルマップと連動しているので、帰国後グーグルマップの「タイムライン」を開くと、なんと頼んでもいないのにスケッチ旅行の間、いつどこでどのように移動し、どんな写真写真を取ったのかがわかるのだ。この写真をいつどこで撮ったかが一目瞭然なので、後日の写真の整理も容易だ。

 普通の海外旅行とはちょっと違う、絵描きの旅5つの心得。今まさに計画している人のお役に立てれば幸いだ。


p.s.
ここでは触れなかったが、英語が不安で海外のスケッチ旅にしり込みする人がいるかもしれない。そんな人は「初めての海外スケッチ旅 英単語さえ知っていれば何とかなる!?→」を参照してほしい

p.p.s.
このブログでは文中にリンクを張ったほかにも以下のような関連記事を書いている。興味ある人は参考にしてほしい。
■カテゴリ「スケッチの旅海外編→
■「海外スケッチ旅、安く行く方法は?→

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風景画の下書きはどう描いたらいい?→
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10件のコメント

[…] 異国の情景を求めて旅をする。 毎年海外へスケッチ旅行に行くことにしている。といっても私の生活にそれほど金銭的余裕があるわけではない。 ただ、生涯で描きたいと思う場所を、リストアップすると、残りの人生、毎年スケッチに行かないと描ききれないと悟っただけだ。  だから人生の予算のうちの「海外スケッチ費用」を絶対的なものとしてカウントしている。 生涯計画のなかで年間20万円程度の旅行費用など、誰でも、きっと何とかなるはずだ。なにしろ朝から晩まで、初めて見る異国の美しい風景を好きなだけスケッチできるのだ。 これ以上の人生の喜びは無い。(私の体験談はこちら→https://miryoku-yoshine.com/category/journey-world/) 絵の好きな人は自分で、描きたいところをリストアップしてみてほしい。そして生涯のスケッチ計画をしてほしい。 私と同様、きっとすぐに、来年の飛行機の早割りチケットを予約したくなるはずだ。(海外スケッチ旅の心構えはこちら→https://miryoku-yoshine.com/overseas-sketching-knowledge/) […]

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